医薬品設備建設における「オーナーのプロジェクトマネジメント2nd改訂版」【第5回】

今回は、FSステージに続く、基本計画ステージについて記載していく。

参考 以前に記載した記事の目次
1.    はじめに
2.    プロジェクトステージの概要
3.  何をマネジメントするか
4.  プロジェクト計画に関連する主要な問題点
5.  プロジェクトマネジャーの役割と責務
6.  プロジェクトマネジャーの資質
7.  プロジェクトで使用することば
8.  外部への依頼範囲
9. コントラクターとの契約、および訴訟を意識したマネジメント
10. FS(Feasibility Study)ステージ

 

11. 基本計画(概念設計)ステージ
 第1回の表2.1に記載したが、基本計画(または概念設計)とは、FSにて決定したケースについて、基本設計(基本計画に続くステージ)を実施するための条件設定を行うステージである。また、FSステージを経過しないプロジェクトでは、この基本計画からプロジェクトを開始する場合もある。つまり、基本設計を開始する前に、設計およびプロジェクト遂行上の目的、予条件、前提条件を明確にしてまとめ、コンセプトの検討、設備概要の検討を行うステージである。さらにこの基本計画の成果(予算、スケジュール、設備概要等)の承認を得て、次ステージへの移行のGo/No Goの第二次評価を行うステージと考えられる。新製品の場合は、当該プロジェクトでの設計および仕様決定上の基本とする開発データ・一般データなどをまとめる(工業化研究成果のパッケージ化)ことが、同時並行で行われているステージでもある。このステージにおける検討は、主として製薬会社にて実施する場合もあれば、アライアンス契約等により外部との協働にて実施する場合もある。いずれの方法を採るかは製薬会社のリソース等の事情によると考えられる。

 主な検討項目は(以下の項目は順不同であるが)、

  • FSの成果物の精度アップ
    • FSで決定した生産場所について各種調査検討
    • 生産規模の精度アップ、将来の生産予想等の精度アップ
    • インフラ、および試運転時や生産時の要員の検討
       
  • FSステージで作成したプラント基本構想をベースに、基本計画仕様などのプラントの具体化検討
    • プラント方式の決定(生産方式、専用設備/マルチ設備等)
    • 上記の生産規模に従い、本プラントサイズの決定
       
  • 基本計画仕様
    • プロセス設計
    • プロセスフロー
    • Preliminary P&ID
    • 物質収支(製造法とタイムシート)
    • 機器基本仕様
    • 主要機器リスト
    • ユーティリティ構想
    • ユーティリティ消費量概要
    • 配置基本計画
    •  材質選定基準
    • 運転方案(製造法とタイムシート)
    • インフラ計画 等
       
  • 予算算出と基本スケジュール(FSステージの予算や工期の精度アップ)
  • GMP Statementの作成(バリデーション、クオリフィケーションの方針) 
  • プロジェクト構想 
    プロジェクトの構想確定、外部依頼先への契約方式範囲の検討
  • 上記を基に事業化の第二次評価を行い、次のステージのGo/No Goを決定

(1) プロセス検討
 医薬品設備のプロジェクトの場合、基本計画ステージにおいてもプロセスが未完成なことが多い。特に新製品の場合は、当該プロジェクトでの設計および仕様決定上の基本とする開発データ・一般データなどをまとめる(工業化研究成果のパッケージ化)ことが、同時に行われており、複数のプロセス案が存在することもある。
 基本計画ステージでのプロセス設計は、FSステージの精度アップであるが

  • 配置構想
  • プロセス概要書
  • プロセスブロックフロー
  • 基本プロセスフロー
  • 物性データ
  • 物質収支
  • 主要機器基本仕様
  • 基本操作条件 
  • 材質選定基準
  • 汚染物質データ
  • 廃棄物リスト
  • 用役消費量概算書

といった成果物を作成することになる。
 

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