再生医療等製品の品質保証についての雑感【第69回】
第67回:再生医療等製品の製品開発と製造工程開発とQbD (8)
~ 指南書の作成について ~
はじめに
ここまでにお話しをした、製品開発(QbDアプローチを活用した製品設計と製品開発)の考え方は、AMEDの再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業(QbDに基づく再生医療等製品製造の基盤開発事業)において、「指南書」としてまとめる方向で進めています。以前にもお話ししましたが、同事業は本年度が最終年度であり、その成果の公表活動を進めており、昨年12月の事業成果報告会(公開シンポジウム)において、指南書の概要について説明しました。
本指南書は、公的なガイドライン等ではなく、本年4月以降に、我々の細胞製造ことづくり拠点や、紀ノ岡研究室のホームページにおいて公開することを予定しています。本稿では、指南書の位置づけについて説明することで、筆者らが推進する「QbDアプローチを活用する製品開発の考え方」のまとめとしたいと考えます。
● 指南書における製品開発の考え方は理想論である
今回作成した指南書は、厚労省の指針や経産省の開発ガイドラインにはできません。理由として、指南書に記した製品開発手順には、ミニマムリクワイアメントの要求事項ではなく、そもそも論に基づく、現状で考慮できる最適解からの要求事項だからです。いわば理想論であり、PLの紀ノ岡先生は、「教科書的な位置づけ」と評しています。
細胞加工製品の製品開発では、有効性を担保するQTPP(目標製品品質プロファイル)に相関するCQA(重要品質特性)を単独で決定することが難しい場合があります。その場合は、下図に示すように、治験製品製造時において妥当性を評価したQTPPとCQAの相関は、製造方法の変更により担保されなくなる可能性が否定できません。すなわち、変更を実施しようとすれば、製品設計のいずれかの段階に「後戻り」するリスクが生じます。理想的な製品開発では、後戻りを生じないようにするため、製造工程開発(製造工程開発プログラムの構築)を前倒しで実施する必要があります。
一方で、製品開発の初期段階(製品設計)において詳細な製造工程開発プログラムを構築することは、必要なデータ収集など、コストや時間がかかり、事業者に負担が生じます。変更に関する制限や後戻りのリスクを事業者が許容できるならば、製造工程開発プログラムの前倒は必ずしも必須ではありません。
製造工程開発プログラムにおいて何を要求事項とするかは、事業者の戦略に依存します。例えば、コストと時間を最小限に実用化を目指すベンチャー企業は、実直に全ての要求事項を実施するではなく、ここに記載された要求事項を理解し、むしろいかに省略することができるかが命題となると認識します。その場合、本指南書はあくまでも踏み台です。これらを考慮すると、本指南書は、要求書ではなく、解説書(教科書)としての位置づけであることが重要と考えます。
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