医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第38回】

国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
「グローバル企業から見る日本国内製薬企業の課題について」
1、 製薬企業のあるべき姿
製薬企業の国際化多様化が進む中、国際化多様化で求められる人権尊重、人権保護の観点からも化学物質にさらされて仕事をする人材を守る事が重要課題です。世界中で使用されているワクチンや医薬品そして化学物質は人の健康への影響が多かれ少なかれ存在します。従って、各メーカーは各国法律でSDS(Safety data sheet 安全データーシート)を作成し、譲渡先(売却先)に商品と共に要求があれば提供しなければなりません。このSDSには一般的に国際法であるGHS(Global harmonized symbol)の表示なども書き込まれます。あるべき姿としてSDSには人の健康を守るために必要な情報が記載されます。又、リスク低減無しでは取扱い不可能な重篤な化学物質も存在します。これら化学物質のリスクアセスメントをする事とGHSのラベル表示等をする事を国内法の改正安衛法でも求められています。しかし、リスクアセスメントをしただけでは人を健康被害から守る事が出来ません。リスクアセスメントには、その事前情報としてSDSに記載されているべき、健康への影響を及すだろう基準値、限界値が示されていなければ適正な評価は出来ません。又、リスクの大きな化学物質や原薬等の取扱いに対するリスク低減対策をどこまで実施せねばならないか。最終的に必要があれば人的保護具はどのレベルのPPE(Personal protective equipment)が必要で人の健康への影響を回避出来るレベルなのかを計り知ることが重要です。以下にSDSで記載されるべき要件と国内法で求めている記載要件のGapを明記しておきます。
<人の健康被害への影響をリスクアセスメントする為に必要なSDS記載データー>
- OEL(Occupational exposure Limit): 職業曝露限度
- OEB(Occupational exposure band):職業曝露帯
- CMR(Carcinogens Mutagens and Substances Toxic to Reproduction)
発がん性 変位原性 生殖毒性 - 生殖毒性のカテゴリー G1:OEL以下は許容, G2:OEL以下でもリスク有り
- Sr: 呼吸感作性カテゴリー:呼吸感作の危険、重度の潜在的影響(アナフィラキシー反応)
- Sk: 皮膚感作性のカテゴリー:
特定的な皮膚への危険、高い皮膚吸収、皮膚感作の危険
- Cor: 腐食性化合物-重大な皮膚および眼球への危険
- 粉じん爆発が起こる作業の最小着火エネルギー(MIE)による選別
(1) 1000mj以下:着火感度低い
(2) 100mj以下:作業員への接地
(3) 30mj以下:着火源対策、特に静電気放電対策
(4) 10mj以下:着火感度高い、10bar耐圧、ガス置換など特別な配慮必要
(5) 3mj以下:引火性ガス・液体と同様な危険レベル
- 粉じん爆発の激しさを示すKst
Kst 爆発クラス 爆発の激しさ
0 St 0 爆発しない
200以下 St 1 弱い爆発
201~300以下 St 2 激しい爆発
301以上 St 3 特に激しい
<国内法で求められているSDS記載項目>
- 製品及び会社情報
製品名、MSDSを提供する事業者の名称、住所、担当者の連絡先 - 危険有害性の要約
- 組成及び成分情報
含有する対象化学物質の名称、政令上の号番号、種類、含有率(有効数字2けた) - 応急措置
- 火災時の措置
- 漏出時の措置
- 取扱い及び保管上の注意
- 暴露防止及び保護措置
- 物理的及び化学的性質
- 安定性及び反応性
- 有害性情報※3
- 環境影響情報
- 廃棄上の注意
- 輸送上の注意
- 適用法令
- 11~15のほか、MSDSを提供する事業者が必要と認める事項
本来、SDSの発行目的は化学物質の曝露環境下でオペレーションする作業者の健康を守るために定性評価・定量評価を8時間TWAで評価し、曝露リスクがOEL以下か以上かを判定すること。更にCMR物質である場合は上記の判断に更に厳しい管理を行うようリスク低減対策を行い、生殖毒性がG2の情報を入手すれば作業者から女性を外すことなどが曝露管理上の要件とする事により、人権尊重・人権保護の立場と多様性から判断してゆくことが求められます。同様にMieやKstの粉塵爆発リスクについてもSDSの情報の中に数値で記載されると予防阻止としてのリスクアセスメントの評価結果からリスク低減対策として防爆設備の導入や防爆器具の導入により、事前にリスク低減対策を行う事が求められています。
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