【販売承認と製造実態の相違の点検結果について】ASTROM通信<100号>

株式会社プロス発行のメールマガジン『ASTROM通信』のバックナンバーより記事を抜粋し、一部改編をしたものを掲載いたします。

本稿は【2016.6.15】に発行されたものです。
記事の原著は、こちらでご確認下さい。 ASTROM通信バックナンバー


こんにちは
ASTROM通信担当の橋本奈央子です。

アジサイがきれいな季節になりましたが、いかがお過ごしですか?

さて今回は、1)2016年6月1日に発表された「医薬品の製造販売承認書と製造実態に関する一斉点検の結果」と、2)2016年4月にEU・米国間で実施されたTTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)交渉について取り上げたいと思います。

最後までお付き合いいただければ幸いです。


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1.医薬品の製造販売承認書と製造実態に関する一斉点検の結果
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平成28年6月1日に発表された「医薬品の製造販売承認書と製造実態に関する一斉点検の結果」は、平成28年1月19日に出された「医薬品の製造販売承認書と製造実態の整合性に係る点検の実施について」(薬生審査発0119第1号厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理課長通知)に基づいて実施された点検の結果となります。

この一斉点検は、2016年2月15日のASTROM通信92号でも取り上げましたが、血液製剤及びワクチン製剤の製薬メーカーにおいて長年承認書と異なる製造方法での製造が行われてきたことを受けて行われました。

厚生労働大臣の承認を得た全医薬品(32,466品目)について、医薬品製造販売業者(646社)が点検を実施した結果、医薬品の品質、安全性に影響を与えるような、事前承認が必要な相違はなかったものの、事後届出(軽微変更届出)が必要な相違は、479社 22,297品目(全品目の69%)にあることが判明したそうです。

■相違品目数
誤記     : 19,307品目
情報更新遅延 : 5,288品目
代替試験法  : 6,311品目

■相違の内容
誤記     :製造実態には変更はなく、承認書への記載時に誤った記載を
        行ったもの
情報更新遅延 :原料の仕入れ先の変更及び医薬品の製造委託先の名称変更に
        ついて、承認書への記載更新を遅延したもの
代替試験法  :日本薬局方で認められている試験方法へ変更していたもの

相違については既に医薬品製造販売業者が解消のための手続(軽微変更届出)を実施したそうです。

厚生労働省は、2016年6月1日付で、「医薬品の製造販売承認書に即した製造当の徹底について」という通知を発出し、再発防止の徹底を求めています。
また、今後、無通告査察(抜き打ち査察)を行い、法令遵守の監視の強化を行っていくそうです。

出典:厚生労働省HP
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000126263.html
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T160602I0040.pdf


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2.EUと米国のTTIP交渉について
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2016/4/25~4/29にかけて、EUと米国は、13回目のTTIP(Transatlantic Trade and Investment Partnership:環大西洋貿易投資パートナーシップ)交渉を行いました。
TTIPは、TPP(環太平洋パートナーシップ)と同様、自由貿易に関する協定で、残存する輸出入関税の撤廃や業界基準の相互承認、市場アクセスの簡素化等を目的に、2013年7月から交渉が続いています。

2016年4月に行われた交渉のうち医薬品関連分野では、米国とEUの査察官が、緊密に活動する方向で話が進んだようです。今後は、下記のことが予定されているそうです。
 ・革新的な医薬品、ジェネリック医薬品、バイオ後続品、公衆衛生に役立つ
  医薬品等、様々なタイプの医薬品の研究、開発、評価を可能にする科学的
  対話や情報交換
 ・GMP査察に関して、EUは、他の当局が発行したGMP適合証明を受け入れる
  ことを提案中で、それを行うための、第3国にある製造所のGMP適合証明の
  諸条件の追加
 ・規制当局が機密情報、医薬品の承認や管理に関する企業秘密を含む規制情報
  を交換することの許可と、機密情報や企業秘密のやりとりを保護するための
  対策の整備
  ※交換する情報には、ガイドラインのドラフト、政策方針書、GMP/GCP
   査察報告、GMP不適合情報、回収、データの完全性、医薬品の不足の
   リスクといった情報が含まれるそうです。
 ・医薬品規制当局連携のためのワーキンググループの立ち上げ

出典:
https://www.gmp-publishing.com/en/gmp-news.html


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まとめ
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1.医薬品の製造販売承認書と製造実態に関する一斉点検の結果 について
全品目の69%で、医薬品の製造販売承認書と製造実態の間に事後届出が必要な相違があったそうですが、この数字をどう思われましたか?
個人的には、たぶんそれ位の数字にはなるんだろうなと思いつつも、もっと少なくあってほしかったなという気もしました。
事前届出ではなく事後届出が必要な程度の相違だったとはいえ、半数以上の品目で、承認書と製造実態の間に相違があるというのは、ある意味、GMPの根幹に関わる重大な事態といえるのではないでしょうか?
誤記、遅延等理由は何であれ、これだけ多くの相違が発生したということは、多くの会社で変更管理がうまくいっていないということを示していると思います
この機会に、変更管理の手順の見直しをする必要があるのではないでしょうか。

2.EUと米国のTTIP交渉について
TPPはよく耳にしますが、環太平洋のTPP以外に、環大西洋のTTIPがあることをはじめて知りました。
それはさておき、もしEUと米国が新たな業界基準の相互承認のしくみを作れば、
PIC/S(The Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme :医薬品査定協定・医薬品査察協同スキーム)や、
ICH(International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use:日米EU医薬品規制調和国際会議)にも影響があると思われます。
TTIPの今後の動向を見ていく必要がありそうです。
 

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