いまさら人には聞けない!微生物のお話【第35回】

2023/02/17 その他

微生物ラボの設計について。

5. 微生物ラボの設計

微生物ラボを設計する際は、以下の状況を反映させる必要があります。

①    微生物ラボでどのような試験を行うか?
②    どういった微生物を扱うか?
③    どんな機材を置くのか?
④    取り扱うサンプルの量および試験の頻度は?
⑤    試験作業者の人数は?

微生物ラボに備えるべき設備、装置、機器は、実施する試験により変わります。たとえば無菌試験を実施するのであれば、クリーンルーム(無菌試験室)は必須です。しかし無菌試験を実施しないのであれば、クリーンルームを持つ必要はありません。また試験の頻度や1回あたりの試験ボリューム、たとえば何枚のシャーレ(ペトリ皿)を使うか、により装置や機器のサイズが変わってきます。そのため、まず自社の微生物ラボで実施する試験の内容(種類と量)をできる限り正確に見積もる必要があります。その上で準備すべき機材を決めることが重要です。

微生物ラボに置く機器類のサイズや仕様は、試験の作業性や試験ボリュームにも大きく関係します。また機器類の配置は作業性に影響します。そのため機材のサイズ、ラボ内の配置は、事前にきちんと計画し導入することが肝要です。

前述の通り、ここでは取り扱う微生物は、リスクレベル1および2の細菌と真菌に限定することとし、そのためバイオセーフティ上のリスクは、限定的であるとします。そして実施する試験の範囲は、以下とします。

①    バイオロジカルインジケータの培養試験
②    バイオバーデン試験
③    菌数限度試験
④    バイオロジカルインジケータなどの生菌数測定
⑤    環境微生物試験(落下菌、空中浮遊菌)
⑥    培地性能試験(一般細菌用、真菌用)
⑦    特定菌試験
⑧    微生物株の保存

上記を考えた場合、滅菌の指標菌と培地性能試験で使用する菌株が主なもので、それ以外ではバイオバーデンや環境微生物として検出されたものになります。バイオバーデンや環境微生物は、人や動物由来ではないため、その多くは非病原性と考えられます。培地性能試験で使用が想定される微生物のリスクレベルは、以下の通りです。

表2 一般的な微生物ラボで取り扱うリスクレベル1および2の微生物

一般の微生物ラボでは、リスクレベル3以上の微生物は使うことはできません。そのようなレベルの微生物を使う場合は、バイオセーフティ上、生物学的に厳密な封じ込めが可能なラボが要求されます。なおリスクレベル2といっても、微生物ラボで一般的に使用される大腸菌(Escherichia coli)やブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などから、赤痢菌(Shigella spp.)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)なども含まれます。重要な病原体には、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」により所持する者の義務と罰則が規定されています。一般の微生物ラボではこれらを使うことはないと思いますが、知識として持っていて下さい。
 

 

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執筆者について

古谷 辰雄

経歴

株式会社シーエムプラス GMP Platform シニアコンサルタント
ジョンソン・エンド・ジョンソン、クリエートメディック、ボストン・サイエンティフックにて、滅菌管理、微生物管理、品質保証業務を経験した後、2013年に(株)シーエムプラス入社。
医療機器メーカー在籍当時、エチレンオキサイド滅菌のスペシャリストとして厚生科学研究班、各種滅菌関連委員会に参画。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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