製造担当者も知るべき臨床試験の基礎知識【第4回】

 1948年 世界医師会は、「ジュネーブ宣言」を採択し、"私は、良心と尊厳をもって医業に従事する。""私は患者の健康を私の第一の関心事とする。"等10項目を宣言した。
 1964年、世界医師会は「ヘルシンキ宣言」を採択し、医学研究は最終的にはヒトを対象とした試験によらねばならない事を認めたうえで、"被験者個人の利益と福祉を科学や社会に対する寄与よりも優先すべきである"という原則に立って、研究の倫理性を守るための具体的な手続きを明らかにした。
 国内では、1966年に精神病の患者に開発中の薬を投与して20名が被害を受け、サリドマイドやスモンの薬害事件、昭和56年、57年には申請データの捏造・改ざんが発覚し、これを端緒に日本製薬工業協会から自主ガイドラインとして「医薬品の臨床試験に関する要領作成の指針」を公表した。
 その後専門家会議にて、諸外国のGCP、我が国における治験の経験、医療の環境を考慮して検討され、最終的に1989年10月2日に「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」として通知された。
 
 *GCP=Good Clinical Practice
 
「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」の変遷
 1989年 GCP通知 「医薬品の臨床試験の実施に関する基準:旧GCP」
 1997年 GCP省令 「医薬品の臨床試験の実施に関する基準:新GCP」
 2001年 省令(一部の文書が、書面の交付に代えて電磁的方法を可能とした)
 2003年 GCP省令改正(医師主導治験の追加)
 2004年 GCP省令改正(GPSP省令化に伴う改正)
 2006年 GCP省令改正(外部IRB設置)
 2008年 GCP省令改正(法人に関する民法改正に伴う改正)
 
 旧GCPでは、治験審査委員会や同意取得は取り入れられていたが、口頭同意も容認されていた。また、当時の日本の治験の実態を反映した治験総括医師を中心とする治験体制を基本としていて、依頼者の役割が限定され、モニタリング(治験の監視、管理)、監査による原資料の直接閲覧は想定されていなかった。
 
 1993年に、ソリブジンと抗がん剤の相互作用による死亡事故が発生したことを契機に、「医薬品安全性確保対策検討会」が設置され、医薬品の治験から承認審査、市販後調査に至るまでの総合的な安全性確保対策について検討された。中央薬事審議会からの答申を経て、1997年(平成9年3月3月27日)厚生労働省令第28号、(4月1日施行)として、新GCPが制定された。
 新設制度は次のとおりである。
 
 (1)インフォームド・コンセント(同意取得)の厳格化
 (2)治験審査委員会の充実
 (3)審査範囲の拡大
 (4)安全性情報の迅速な伝達ルールの制定
 (5)治験に係る関係者の責任と役割分担の明確化
  1) 治験依頼者の責務
  2) 医療機関の長/治験責任医師等の責務
  3) 業務手順書作成の義務化
  4) チームによる治験の実施
  5) 治験責任医師の要件確認
  6) 治験依頼者による医学専門家の活用
  7) モニター・監査及び規制当局による原資料の直接閲覧

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