医薬品工場建設のノウハウ -プロジェクトの成功に向けて-【コラム-5】

2017/02/23 施設・設備・エンジニアリング

プロジェクトを成功に導くための手順について、ユーザー(製薬会社)の視点で紹介する。

コラム-5 プログラムと設計

はじめに
本コラムでは、医薬品の生産施設、研究所など多数のプロジェクトに建築意匠設計の立場から参画し、施設のコンセプトを構築してきた経験から、各計画・設計の段階について述べるとともに、製薬企業と設計者が共有すべき事項を考えたい。
 
医薬施設を計画する際には、生産・流通、研究開発、管理施設を単にGLP,GMP適合施設として構築をするだけでなく、3つの要素が相互に関係し合い新しい価値を生みだす複合施設として成立させることが重要と考える。
各要素が関連し合った複合施設が、会社を発展させる生産能力、開発能力、管理能力を促進し、その主体である組織、空間、行動原理を体系化(アルゴリズム)する。
施設の構成はこの体系化の考え方の反映であり体系化の促進である。
具体的には、課題、条件の整理からコンセプトの創出までのプログラムの作成、さらに基本構想(CD; Conceptual Design)を行うことで、施設構成の基本的な考え方が出来上がる。更に基本計画(SD; Schematic Design)まで行うことで体系化した施設構成が確定する。次の工程の基本設計(BD; Basic Design)・詳細設計(DD; Detail Design)で設計組織が変わっても、基本的な目的は達成される。なお、CD、SDの要素をまとめてCDまたはSDと呼ぶ場合が多い。
 
プログラムの作成
施設を構成する多様な要素を整理し、施設構成の理念、原則を確定することがプログラムの作成である。最適なプログラムの作成は成功する施設の第一条件である。プログラムがなければ施設の設計は迷走する。プログラムは施設設計のバイブル(原典)である。
初めに各々の構成要素の課題は何かを見つけ、それを解決し各々の最適化を実現することが必要である。しかし各々の構成要素の最適化が必ずしも全体の最適化をもたらすものではない。部分最適を全体最適に繋げるためには体系化が必要である。しかしながら体系化のプロセスで、全て合理的な決定ができるわけではない。全体最適は永遠に完成しないが、完成に向かって努力し続ける目標である。この非合理的な努力が創造性を生み出し企業の競争力を生み出すのである。完全な全体最適はないが、あり方(方針)の決定が必要となり、意志決定者がある段階で決定しなければならない。これはどの様な理念、原測で全体最適化を進めるかを決めるプログラムの重要課題である。
プログラムは基本構想から工事完了まで、施設計画の決定に関わるクライアントとプログラム作成者の共通コミュニケーション・ツールである。プログラムはプロジェクトをスムーズに進めるために立ち返る共同の規範である。

3ページ中 1ページ目

執筆者について

糀谷 利雄

経歴 1967年明治大学理工学部建築学科を卒業。
1982年大手エンジニアリング会社入社。
医薬を中心に、生産施設、研究所など多数のプロジェクトに参画し、高生産性を実現する施設のコンセプトを計画・設計する。
現在、株式会社シーエムプラス フェロー
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

40件中 1-3件目

コメント

この記事へのコメントはありません。

セミナー

2025年5月30日(金)10:00-16:30

バイオ医薬品の開発とCMC戦略

2025年9月10日 (水) ~ 9月12日 (金)

GMP Auditor育成プログラム第20期

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

株式会社シーエムプラス

本サイトの運営会社。ライフサイエンス産業を始めとする幅広い産業分野で、エンジニアリング、コンサルティング、教育支援、マッチングサービスを提供しています。

ライフサイエンス企業情報プラットフォーム

ライフサイエンス業界におけるサプライチェーン各社が提供する製品・サービス情報を閲覧、発信できる専門ポータルサイトです。最新情報を様々な方法で入手頂けます。

海外工場建設情報プラットフォーム

海外の工場建設をお考えですか?ベトナム、タイ、インドネシアなどアジアを中心とした各国の建設物価、賃金情報、工業団地、建設許可手続きなど、役立つ情報がここにあります。

※関連サイトにリンクされます