医薬品工場建設のノウハウ -プロジェクトの成功に向けて-【コラム-2】

2016/01/21 施設・設備・エンジニアリング

プロジェクトを成功に導くための手順について、ユーザー(製薬会社)の視点で紹介する。

コラム-2 FS(F/S Feasibility study)について

プロジェクトは、案件発掘~概略計画~F/S~資金調達~実施設計~入札(コンストラクター選定)~建設~運営管理の手順で実施され、F/Sでは一般に概略計画を基にプロジェクトの実行可能性を検討し、その報告書は開発主体の意思決定判断や融資機関の妥当性審否の資料として用いられる。(ウィキペディアより)


 担当者にとってのFSは、温めてきた夢や理想を現実化するチャンスであるとともに、技術力の問われる試練の場であった。
 概略計画が現実味を帯びている場合は、FSに充てられる時間が限られており非常にプレッシャーの係る業務である反面、概略計画が遠い先を見据えているものである場合は、ウキウキしながら実施したものである。
 
 また、一方でFSは技術者育成という観点では是非経験したい、あるいはさせたい業務であることは言うまでもない。
 医薬品工場建設は会社にとって一大事でそう何度もあるものではなく、建設するからには遠い将来の、あらゆる意味での堅牢性、機能性、拡張性が要求される。
 
 これらを検討するための因子は、GMPを始めとした法的要求事項の動向、ますます活性が高くなる医薬品への対応、最新の生産設備、支援設備の技術動向、IE(Industrial Engineering)として要求される小人数化への対応等々、数え上げたら切りがなく、最後に重くのしかかるのが投資コストである。
 これらの検討結果をケーススタディ1,2,3(あるいはそれ以上)として、ケース毎のメリット、デメリットを具体的に、且つ詳細にまとめ、夢と現実を併せて語ることが重要である。

 筆者は夢工場建設が目標であったので、ついついあれもこれも満足すべき案を推奨ケースとし、よく、高すぎると叱責を受けたものである。
 一番高コストをダミーとして、2案を推奨するのも効果的かも・・・・・・
 
 いずれにしろ、FSがしっかり行えれば、UR(User Requirements)は完成したようなものであり、その後のプロジェクト推進の紆余曲折を避けることが出来るといっても過言でないくらい重要なステージの一つであると筆者は確信している。
 是非、夢工場建設のためのFSを実施していただきたい。
 

執筆者について

田中 信夫

経歴 1970年武田薬品工業入社、2014年退社まで一貫して注射剤関連業務に従事。
初期段階は注射剤の製造管理、工程管理を担当し、その後研究所にて新製品の工業化検討、プレフィルドを含む新規デバイス検討に従事、最終段階では、新設備建設での用水・空調を含む製剤機器選定、DQ/IQ/OQ/PQ/PVの立案・実施、その後の国内外査察対応までの一連業務に従事。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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