医薬品工場建設のノウハウ-プロジェクトの成功に向けて-【コラム-1】

2015/10/07 施設・設備・エンジニアリング

プロジェクトを成功に導くための手順について、ユーザー(製薬会社)の視点で紹介する。

コラム-1 プロジェクトへの思い

 プロジェクトの成否の基準は、第1章でも述べた通り、以下の3点で共通しており、どれか一つでも達成が出来ない場合は失敗と見做される。

①   コスト、スケジュール、経営資源(リソース)などの制約が計画の範囲内で満足していること。

②   成果物の出来栄え(品質)が要求を満足していること。

③   全てのステークホルダーの要求や期待を満足していること。

 

 上記目標を達成するために、プロジェクト立ち上げの際に編成が大きなポイントとなり、メンバーは社内の精鋭(経験者)を集めて構成することが往々にして行われる。
 勿論これは理にかなっており、成功の秘訣であることは間違いない。

 その際、未来と現在両方を見据え、強調したいことは下記の2点である。

 

①「プロジェクトは将来の精鋭(技術者)を育てるための最大のチャンスである」

 これは、「精鋭になるためのいろいろな場面を必然的に経験できる」ということである。是非将来を担う若手を参画させたい。医薬品工場建設というのは、そう何回もあることではないことは言うまでもない。

 

経験できること(学べること)

・長期に亘りGMP耐久性を確保すべき工場建設を目指すので、最新のRegulationやGuidelineを精査すること。

・例えば、PIC/S Annex15 Qualification and validation に沿った自社システムの改定や構築を経験できる。

・設備設計等においては、効率の追求とコストパフォーマンスとの狭間で苦闘を経験し、最高の着地点とはどういうものかが実感できる。また、エンジニアリングとプロセス担当者がコラボすることにより運用段階でのQualificationの容易さも追求でき、双方の視野が広がる。

・製剤プロセスにおいては、Pre-PQやエンジニアリングラン段階でいろいろな製造条件(パラメータ設定)検討が行われ、おのずと製造条件の根拠を理解できる。

・プロジェクト遂行のいろいろな場面でトラブルは発生する。トラブルを経験することは大きな財産で、精鋭(技術者)への近道である。

・自らが行った業務でGMP適合性査察の準備を行い、適合性を取得すれば今後の大きな自信に繋がる。

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執筆者について

田中 信夫

経歴 1970年武田薬品工業入社、2014年退社まで一貫して注射剤関連業務に従事。
初期段階は注射剤の製造管理、工程管理を担当し、その後研究所にて新製品の工業化検討、プレフィルドを含む新規デバイス検討に従事、最終段階では、新設備建設での用水・空調を含む製剤機器選定、DQ/IQ/OQ/PQ/PVの立案・実施、その後の国内外査察対応までの一連業務に従事。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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