医薬品工場建設のノウハウ -プロジェクトの成功に向けて-【第4章-3】⑤

2018/07/27 施設・設備・エンジニアリング

町田 進

プロジェクトを成功に導くための手順について、ユーザー(製薬会社)の視点で紹介する。

【第4章-3】⑤ 基本設計

(3) 空調

空調系統図
 平面案が確定した時点で、全ての部屋を記載した空調系統図を作成する。また、製造空間差圧図を作成し、計画案の室圧、気流方向が達成できるか見直しを行なう。更に平面図が固まり、エアーロック室(AL)、更衣室などのすべての製造付属室が配置された時点で、再度、室圧を見直すと、室間差圧が高すぎる場合や、気流方向が逆とすべき等、修正が生じることがある。空調統計図確定したうえで空調モニタリング項目をリストアップし、温湿度測定箇所、微粒子数測定箇所、差圧測定箇所を決定するとともに、監視、警報および記録方法のシステムを構築する。
 
 また、換気回数や温度制御方式を検討する上で機器リストに従い各機器の熱負荷を確認し、必要な熱源要求量を算出する必要がある。
 
 基本計画において、空調システムのコンセプトとして、全外気方式(オールフレッシュ)か循環方式(リターン方式)かは、決定されているが、平面図が確定した時点で、見直しが必要である。平面図確定に伴い、シャワー室や更衣室のような付属室のどこまでをハザードエリアとするか再確認を行うことで、ハザード飛散防止のコンセプトが矛盾なく設計に反映される。
 
・局所排気、ドラフトチャンバー、アイソレータ等の排気検討

製造工程を見直したうえで、局所排気やアイソレータ等の屋外排気について見直しを行う。排気風量に対して、空調風量が十分であることが必要となる。また、屋外排気の発停に伴い製造室の差圧が制御可能かどうかの確認を行う。
 
局所排気については、ハザードの製造室の排気を屋外に直接、排気することが問題となるケースが多く、ハザードレベルの確認と排気処理の有無を確認しておく。
アイソレータについては、除洗、排気、通常運転の各モードに対して空調の給気量が調整され、製造室圧が維持できるか検討をする。

 

 


(4) 電気

 電気については、機器リストに記載されたモータ容量を見直すことが必要であるほか、停電や瞬低対策をどの機器に対して行うのかを検討をする。また、対象機器とバックアップの要否を決めるだけではなく、復電後に自動起動させるか否かを、機器毎に見直しておくことが必要と考える。
 
 上記の、停電対策や瞬低対策が決定されたのち、電力の供給方法について、省エネルギー、バックアップ方式、給電量の観点から、必要に応じてコジェネレーション、電池永蓄熱等の検討を行い、単線結線図としてまとめる。

 

 

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執筆者について

町田 進

経歴 株式会社シーエムプラス 副社長。
2010年株式会社シーエムプラスに入社後、プロセス要件を展開し、建築やMESシステム、バリデーション等へのフロントエンジ段階での設計条件トランスファを行う業務を担当。主要な業務例は、
1)バイオ原薬の基本設計から施工/バリデーション確認
2)高活性合成原薬基本計画策定
3)固形製剤の搬出入トラフィック改善のための基本計画
4)高活性固形製剤の基本計画立案
5)再生医療のSOP作成
6)原薬のMESシステム計画立案
等が挙げられ、全てプロジェクトマネージャーとして担当した。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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