医薬品工場建設のノウハウ -プロジェクトの成功に向けて-【第4章-3】④

2018/07/13 施設・設備・エンジニアリング

町田 進

プロジェクトを成功に導くための手順について、ユーザー(製薬会社)の視点で紹介する。

【第4章-3】④ 基本設計

(2) 建築

平面図
 平面計画案から、平面図に展開する。この時点でP&IDによる機器の配置や配管メインルートが検討され、物流および保管検討の検討により、保管量から見たスペースが検討されているはずである。これらの情報から各室の面積の見直しを行う必要がある。
 
 P&IDが、ファイナライズされていなくとも、この時点の内容で、機器スペースに加え、配管敷設スペースも想定することができる。また操作架台(ステージ)の大きさも想定が可能であり、平面レイアウト上のスペースがより正確に検討できる。
 
 また、各室の面積以外に、平面計画案から、下記の観点(主要項目)で必要に応じて平面図として修正を行う必要がある。
 
・建築構造

建築構造については、機器リストにおいて機器のローディングデータが明らかになった時点で検討を進めることとなるが、建屋の柱スパンについては、製造室のスペースに影響を与えることがある。特に包装室のようなラインが長い機器については、柱の設置が、操作動線を狭め、作業性を悪化させるケースがある。
 
また、屋外との界面室(玄関、倉庫搬入口等)は、防虫防鼠対策として、天井部分を含めた建築スラブまでの間仕切を考慮する場合は建築構造に影響する設計項目を与える。

 
・空調の給気口、還気口位置

クリーンルームの必要換気回数に加え、検定される機器発熱量により、各室への空調の給気量が算定され、給気口の配置を設計することができる。また、クリーンルームでは、一般的に製造室の下部から還気または排気を行う。このため、制気口を下部に設置するためのダクトスペースが必要となる。このダクトスペースが製造室の機器配置や作業スペースに影響を与えることがあるため、基本設計では平面図にその位置を記載し配置調整を行う必要がある。

 
・機器配置と仕舞

クリーンルームにおいては、機器の上部を天井部分までを囲うなどの“仕舞”を行ない、埃の滞留を防ぐ設計が行われる。仕舞については、天井の照明、空調制気口や他の機器との位置的な干渉をさけるために、仕舞位置方法を検討しておく必要がある。1例として、充填機にアイソレータを設置する場合、アイソレータ上部を天井面で仕舞う際に、アイソレータの側面の両側で、製造室が分断されてしまうことにもなる。クリーンルームへの空調制気口が、充填ラインの片側に偏在することになると、制気口がないエリアの塵埃除去や温湿度制御が満足に機能をしないリスクがあり、機器配置が決定した時点で、総合的な見直しを行う必要がある。


図-2 充填機配置例

 

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執筆者について

町田 進

経歴 株式会社シーエムプラス 副社長。
2010年株式会社シーエムプラスに入社後、プロセス要件を展開し、建築やMESシステム、バリデーション等へのフロントエンジ段階での設計条件トランスファを行う業務を担当。主要な業務例は、
1)バイオ原薬の基本設計から施工/バリデーション確認
2)高活性合成原薬基本計画策定
3)固形製剤の搬出入トラフィック改善のための基本計画
4)高活性固形製剤の基本計画立案
5)再生医療のSOP作成
6)原薬のMESシステム計画立案
等が挙げられ、全てプロジェクトマネージャーとして担当した。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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