医薬品工場建設のノウハウ -プロジェクトの成功に向けて-【第4章-3】③

2018/06/22 施設・設備・エンジニアリング

町田 進

プロジェクトを成功に導くための手順について、ユーザー(製薬会社)の視点で紹介する。

【第4章-3】③ 基本設計

P&ID(続き)
 P&IDの作成は、配管、制御、機器の仕様(例えばノズルサイズ)を規定する基本的であり、かつ統合的なプロセス設計である。基本設計段階では、全ての設計項目が以降で修正が無い様に表記されていると考えるのではなく、配管、制御、機器仕様についての要求事項をまとめる過程として考え、後続の詳細設計において、機器の情報(ノズルサイズ等)や配管敷設スペース等の情報により都度修正して精度を上げる。P&IDは詳細設計以降に配管図、機器製作図、計装制御図作成のために情報を伝達する基本図である。P&IDは、記載されている情報量が多く、プロセス、機器、配管、計装の関係する複数分野のエンジニアにより何段階かを経てファイナライズすることが必要である。P&IDのファイナライズに至る過程で関係するエンジニア、SMEを招集して、P&ID検討会議を実施するが、レビューの方法については、HAZOP(Hazard and Operability Studyプロジェクトのリスク管理の章で述べる)等があるが、有効なアプローチとしてエンジニアリング分野(配管や計装等)毎に、同様の配管部分や同様の機器についての記載が統一されているかを確認し、不整合があった場合にその理由が妥当か、確認することがあげられる。
 
 P&IDは、特に原薬施設については、配管、計装を含む設備仕様を規定する重要な設計図書である。したがって、P&IDのファイナライズの時期、P&IDの制度については、プロジェクト工程に影響が大きく、プロジェクトの成否を決定するものであり、マイルストーンとして重要な監視ポイントである。作成にあたっては、医薬品製造を行うユーザー側と設計や施工を行うエンジニアリング側の協力が不可欠である。また、P&IDは何度かのレビューを経て、ファイナライズされることを記述したが、基本設計フェーズにおけるP&IDの到達点は、P&IDに記載される設計項目の正誤か判断できるレベルで、詳細設計条件を明確化することを目指すべきである。ただし、基本設計でファイナライズされたP&IDが以降の設計で再修正可能と考え、配管分岐や計装の要否制御方法の設計根拠が不明なまま、後続の詳細設計に進むことは、詳細設計で多くの修正作業が必要となり、プロジェクト工程を遅延させる大きな要因となる。後続の詳細設計においては、設計根拠に従って見直した場合の修正や配管経路が変更された場合の改訂を主に行うことになる。
 
 本項で、上記の設計に盛り込むべき主要項目の他、一般的に検討を要する項目を次ページにリストアップする。

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執筆者について

町田 進

経歴 株式会社シーエムプラス 副社長。
2010年株式会社シーエムプラスに入社後、プロセス要件を展開し、建築やMESシステム、バリデーション等へのフロントエンジ段階での設計条件トランスファを行う業務を担当。主要な業務例は、
1)バイオ原薬の基本設計から施工/バリデーション確認
2)高活性合成原薬基本計画策定
3)固形製剤の搬出入トラフィック改善のための基本計画
4)高活性固形製剤の基本計画立案
5)再生医療のSOP作成
6)原薬のMESシステム計画立案
等が挙げられ、全てプロジェクトマネージャーとして担当した。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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