医薬品工場建設のノウハウ -プロジェクトの成功に向けて- 【第4章-3】②

2018/06/08 施設・設備・エンジニアリング

町田 進

プロジェクトを成功に導くための手順について、ユーザー(製薬会社)の視点で紹介する。

【第4章-3】② 基本設計

P&ID
 P&IDは原薬施設では、基本的なプロセス設計資料である。すべての配管、計器および制御方法を記載し、配管については、配管材質、配管サイズ記載され、保温冷の仕様についても記載される。計装については計器取り付け場所以外に、種類、計装ループを示し、どのような制御が実際行われるかを記載した図書である。P&IDについて、以下に弊社での作成例を示す。


図-1 P&ID例​

 P&IDは原薬施設においては、基本的なプロセス設計図書であるが、製剤施設においては、調整設備以外各製剤機器サプライヤ(例えば、充填機や流動層造粒機)がP&IDを標準図として、機器毎に用意しているケースが多いそのため、製剤施設の場合は、基本設計段階で機器本体のP&IDを作成することよりもサプライヤからP&ID情報を収集し、機器間接続や機器間の原材料や中間体の搬出入を示したマテリアルフロー(例えばアイソレータを充填機間の側面調整など)を確定することを優先することが合理的である。
 
 基本計画で作成されたプロセスフローについて、バリアストラテジーやマテリアルバランス、ヒートバランス等からのインプット情報をもとに、次の設計項目を盛り込んだP&IDを作成する。P&ID作成後は、配管数量やバルブ数量、制御方法、計装計器の数量が明確となる。
 
P&IDの作成にあたり反映すべき主要項目と検討項目を以下に示す。
・機器配置
特に機器の高さについては、配管の上下敷設位置の決定に影響し、配管形状により、配管内に滞留が生じることや上下機器間での送液方法の検討が必要となる。機器の上下関係は、配置と一致させる。
 
・プロセスの流路
特にCIP(Cleaning In Place:定置洗浄)やSIP(Sterilization In place:定置滅菌)を行う場合では流路切替が必要となる。この流路切替のためのバルブ、配管の構成を検討する。バルブによる流路切替を自動で行う場合は、自動弁とし手動弁との区分を行う。分岐位置が適切ではない場合は、配管滞留部を生じることがあり十分な検討が必要である。
 
 医薬品製造においては、配管分岐を最短として、CIP洗浄液、SIP蒸気凝縮水の滞留を無くし、製品滞留が少なく洗浄や滅菌が容易に行えるように配慮する必要がある。このため、配管分岐をどの位置とするか検討が必要である。洗浄性や滅菌性を考慮すると、単に分岐するのではなく、分岐部分に閉止弁を入れ分岐長さを最短とすることも必要となる。
 なお、複数の機器で同様の分岐が必要となる箇所については、分岐方法、バルブ位置を統一することで、実際の設備を運転する際に操作ミスや計装プログラム設計時のバグを減少させることが期待できる。

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執筆者について

町田 進

経歴 株式会社シーエムプラス 副社長。
2010年株式会社シーエムプラスに入社後、プロセス要件を展開し、建築やMESシステム、バリデーション等へのフロントエンジ段階での設計条件トランスファを行う業務を担当。主要な業務例は、
1)バイオ原薬の基本設計から施工/バリデーション確認
2)高活性合成原薬基本計画策定
3)固形製剤の搬出入トラフィック改善のための基本計画
4)高活性固形製剤の基本計画立案
5)再生医療のSOP作成
6)原薬のMESシステム計画立案
等が挙げられ、全てプロジェクトマネージャーとして担当した。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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