エッセイ:エイジング話【第58回】

2つの視点 -その3-

 これまで、関西・関東の私鉄で乗客への対応の違い、中古車販売会社不祥事報道で明らかになった供給者側視点を取り上げました。いよいよ今回は、WFI製造での装置供給者側視点へ踏み込みます。
 外国産・国産を問わず蒸留器は、性能を監視するが如くインライン式導電率計を装備しています。インライン式:配管中にセンサーを埋め込む形式
 日本薬局方各条 (かくじょう)は、注射用水欄に限度値として試験法<2.51>導電率適合を収載(しゅうさい)します。よって、蒸留器に導電率計が装備されても不思議には思いません。
 ところがじっくり考えると、注射用水にとって導電率値適合は左程重い項目ではありません。導電率値を低下することがWFI製造では蒸留器の役割ではないからです。
 入口・出口において、導電率値変化への起因となる物質量は変わりません。表示値は異なりますが温度換算すれば変らないのです。
 ではなぜ、WFI蒸留器は導電率値が変わらないのでしょう?答えは純水を給するからです。ここが海水淡水化蒸留器とは異なるところです。こちらは海水中塩分を低下させることが目的であり、塩濃度と導電率値は比例することが判っています。濃縮液を煮詰めると食塩(しょくえん)を得ることが出来ます。
 能登半島(のとはんとう)珠洲海岸(すずかいがん)へ旅した時、海岸で製塩工程を見学した後、天然塩(でんねんしお)を売店で買いました。食塩とは違った豊富な味覚を感じました。

 淡水化目的の蒸留器は次第にスケールが堆積します。停めて洗浄が必要でありこの作業は離島ではなかなか困難でトラブルが発生していました。この事業を長く実施された企業も撤退され、代りに膜を利用した淡水化事業へシフトされました。
 一方、WFI蒸留器のほうは出来る限り停止期間を少なくしたいのです。なぜなら、停止期間中は注射剤を製造出来ないからです。貯めて置くにしても、出来るだけ短期間にしたいのです。

 

 

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