エッセイ:エイジング話【第56回】

2023/10/20 施設・設備・エンジニアリング

布目 温

2つの視点から見た蒸留水。

2つの視点から見た蒸留水-その1-

 勤めて1年が経った頃に、業務を一元化する会社方針から大阪設計が無くなり東京へ転勤となりました。それまでは東西二本社制を引いており、東京の設計は海外からの導入技術を広める視点から設計を進めるのに対し、大阪の設計はユーザー要求を実現する視点から設計を進めました。
 ユーザー視点では、設計担当者が案件に合わせ対応しましたが、導入技術を広める方は、会社方針によりメーカー側の視点で設計を進めました。入社早々の時期に2つの視点から仕事を進める体験させてもらい一長一短が在ると思いました。
 転勤のおかげで、東西私鉄業界で運行の違いも体験しました。ダイヤの組み方でも、関西で馴染んだ阪急電鉄と関東の小田急電鉄では異なりました。例えば各駅停車と急行を乗り継ぐとき、阪急電鉄なら必ず乗り換駅での連携がスムーズですが、小田急電鉄の方は待たされることがしばしば在ったと覚えています。
 なにしろ阪急電鉄は、京都と大阪間・大阪と神戸間で国鉄(現在のJR各社)と京都では京阪電鉄と大阪では阪神電鉄、私鉄2社を含め3つ巴で競争していました。自社の都合から不便なダイヤを作くろうモノなら、乗客は他の電鉄へ乗り移ってしまうのです。


 象徴的な例を挙げますと、阪急電鉄は国鉄向日町(むこうまち)駅から左程離れない位置に東向日(ひがしむこう)駅と西向日(にしむこう)駅が昭和時代からあります。向日町乗客が向かう先は大都市大阪市か京都市ですから、2つ駅をつくっても採算が合うと考えたのでしょう。 
 しかも、各駅停車駅である東向日駅と西向日から大阪方面へ向かう乗客へは、長岡天神(ながおかてんじん)(現在の長岡京市駅)に於いて、スムーズに急行へ乗り換えができるダイヤを用意し乗客の利便を計ったのです。
 ところが小田急電鉄の方は、都心新宿と城下町小田原を直に結ぶ独占路線が長く続きました。平成時代になってJR湘南新宿ラインが開通し、小田原-新宿間に代替えできる路線が誕生したものの、並行路線ではなく阪急電鉄が関西で行ったような乗客サービスを首都圏で見かけないのです。
 昭和から平成も始めまで、小田急電鉄車両は小田原への途中駅である相模大野(さがみおおの)駅において、前側車両(小田原方面)と後側車両(江の島方面)を切り離す作業する間、しっかり乗客を待たせて置くことをやっており、関西の私鉄事情を知る者はあきれましたが、小田急沿線の人達はこれが日常であり私も暫くすると待たされるのに慣れました。
 競争相手がない路線では、車両のやりくりなど電鉄側の効率でダイヤを決め勝ちであり、乗客優先という発想は出てきません。

 

 

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執筆者について

布目 温

経歴 布目技術士事務所
技術士 衛生工学部門:水質管理
1972年栗田工業(株)入社、1992年野村マイクロ・サイエンス(株)入社。2011年布目技術士事務所(製薬用水コンサルタント)開設。製薬用水のスペシャリスト。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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