医薬生産経営論【第6回】

2013/08/19 製剤

 硬式野球のボールは湿気に弱い。
 未使用のニューボールと、1ヶ月ぐらい使用したボールとでは明らかに重さが違う。しかし、投手にとって軽いニューボールの方が投げやすい訳ではない。ニューボールは滑る。
 投手がワンバウンドを投げたりファウルグランドに転がったりしたボールはボールボーイに渡され、バックネット裏で係員が汚れを拭き取り、縫い糸が切れたり皮に余程の深い傷がない限り、再びゲームに使用される。ニューボールよりも使用済みのボールの方が手にしっとりとして投げやすい。
 走者満塁でボールカウント3ボールのときニューボールが主審から渡されると、ほとんどの投手は「クソッ、なんでこんな時に」と、ムッとしてしまう。唾をボールにつけるのは禁止だし、ボールをおむすびのように捏ねるのも遅延行為と見做されるので、仕方なく、どこかの塁に牽制球を投げて、ボールに湿気を少しでも与えようとする。脂性の内野手がこのときだけは好まれる。
 
 今年、プロ野球界は統一球問題でファンからの信頼を失ってしまった。
 統一球というのは、それまでボールメーカーごとに異なっていたボールの大きさや反発力を同じ基準にしよう、ということと、同じ基準としては国際試合に(特に投手が)すぐに馴染めるようにグローバルなものに合わせようというものである。
 メーカーごとにボールの大きさが違うのは投手にとって面倒なことである。例えば、社会人野球や高校野球では、大会ごとに使用球が違うので、大会前に使用球を調べ、その使用球を使って練習しておかなければならない。ボールの大きさによって、この大会はストレート主体の組み立てをするか、変化球主体で行くのか、決めなければならない。この意味で統一球の果たした役割は大きかった。しかし、なぜメーカーが1社だけになったのかは分からない。

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執筆者について

隠居 孝志

経歴 1972年武田薬品工業(株)入社。生産計画、設備計画、要員計画などの業務に従事。資材部長、生産管理部長、湘南工場長、監査役室長、コーポレートオフィサー・製薬本部長を歴任。
この間、武田アイルランド製薬建設や、グローバル生産体制の構築、BCP推進、環境経営の推進などに携わる。また、業務執行会議メンバーとして、会社全般の事業戦略・製品戦略・経営計画策定、及びミレニアム社、ナイコメッド社の買収などに参画。2012年11月退社。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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