知的財産の基本から知財ミックスまで【第7回】

2022/12/16 その他

今回は「最初の拒絶理由通知」について説明する。

(1)はじめに

 特許出願をした後に、第5回で解説した審査請求を申請すると、しばらくして特許庁から審査結果が通知されます。
 この通知には、大きく分けて拒絶理由通知と特許査定の2種類あり、特に拒絶理由通知の対応は特許化できるか否かに直結することになりますので、注意が必要です。

(2)    拒絶理由通知について
 拒絶理由通知とは、特許庁の審査官が、特許出願書類、特に特許請求の範囲の記載について審査した結果、特許を与えることができない理由(拒絶理由)を発見した場合になされる通知です。
 ちなみに、特許出願の場合、拒絶理由が通知される確率は非常に高いです。拒絶理由通知に対しては反論する機会が与えられますので、特許化できないとすぐに諦める必要はありません。安心してください。

 さて、この拒絶理由通知ですが、実は2種類あります。一つは「最初の拒絶理由通知」で、もう一つは「最後の拒絶理由通知」と呼ばれるものです。

 「最初の拒絶理由通知」とは、一回目の審査において通知すべき拒絶理由が記載された通知です。
 一方、「最後の拒絶理由通知」とは、原則として「最初の拒絶理由通知」に対する応答時の補正によって、通知することが必要になった拒絶理由のみ記載された通知です。

 「最初」と「最後」が違うだけでややこしいですが、この違いは実務的には非常に重要です。「最初」と「最後」で、特許出願の内容を補充・訂正(補正)できる範囲が異なるからです。
 「最初の拒絶理由通知」に対しては、補正できる範囲は比較的広いのですが、「最後の拒絶理由通知」に対しては、少なくとも1回補正を行ったものを再度審査した上での拒絶理由となりますので、補正できる範囲は非常に限定されてしまいます。

 同じ拒絶理由通知なのに、補正できる範囲が異なるのか疑問を持たれるお客様もいらっしゃるのですが、上述のような理由によるものです。
 「最初の拒絶理由通知」と「最後の拒絶理由通知」で、対応策が異なることが多いので、確かに『ややこしい』かもしれません。

 「最後の拒絶理由通知」については何れ説明する予定ですので、今回は「最初の拒絶理由通知」について説明します。

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執筆者について

高松 孝行

経歴

ブランシェ国際知的財産事務 共同代表弁理士。
茨城県出身。東京工業大学大学院にて原子核工学を専攻。大学院での研究経験を生かして、弁理士となる。特許事務所勤務を経て、独立行政法人産業技術総合研究所(現国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研))にて、医薬・医療機器関係の技術を含む技術移転業務に従事。数百社との技術移転交渉、1,000通を超える契約書作成を経験。産総研退職後、2015年3月事務所開設。現在、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業カタライザーおよび独立行政法人中小企業基盤整備機構の中小企業アドバイザー等の公的機関の専門家として、医学部の教授、医師、医療機器メーカー、医療ベンチャー企業等の支援を行う。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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