医薬品開発における非臨床試験から一言【第55回】

 

臨床薬物相互作用試験①

非臨床試験では薬物相互作用(DDI)のメカニズムと安全性のリスクを中心に研究が進められました。非臨床での基本的な情報を基に、さらに臨床でのDDIリスクを評価することで、治療現場での安全な用法用量を定めるために臨床薬物相互作用(臨床DDI)試験が実施されています。ヒトでのDDIの可能性を評価する試験は、健康志願者等を対象に、第III相試験開始前に実施されます。また、臨床用量の被験薬、指標薬、阻害薬、誘導薬を使用します。

臨床試験から被験薬と指標薬との間にDDIが認められると、臨床現場では併用薬についてDDIの可能性を考えます。また、医療用配合剤や併用療法等、被験薬の併用投与が前提となると、該当する薬物による臨床DDI試験の実施も考えます。

臨床DDI試験の結果は、その後の臨床試験(第III相試験等)での併用薬を検討する際に利用されます。非臨床試験(in vitro試験等)からDDIが疑われると、臨床DDI試験で安全性が確認されるまでは、併用を禁止すべきです。第III相試験等でDDIを検討する場合、母集団薬物動態解析法(PPK)による情報は被験者の薬物動態を予測し、有効性及び安全性を検討する上で有用です。製造販売後に、新たなDDIが報告されると、臨床DDI試験の実施も検討します。

DDIの定量的評価は、被験薬又は併用薬の血中濃度推移から求めたAUC(Area Under the blood Concentration:血中濃度時間曲線下面積)で行います。併用薬物との組合せで、薬効や副作用もDDIの指標となります。臨床DDI試験に基づく相互作用の判定は、薬物動態パラメータの幾何平均比の90%信頼区間に基づきます。相互作用薬の併用時の値が、非併用時の0.80~1.25の範囲ならば、当該薬物間の薬物動態学的な相互作用は無いと判断します。

薬物動態パラメータに加えて、臨床試験で確認された安全性も踏まえて、薬物相互作用を判断すべきです。臨床DDI試験において、血中薬物濃度のCmax、tmax、トラフ濃度(反復投与での定常状態における最低値、当日の服薬直前の血中濃度)、クリアランス、分布容積、半減期等の薬物動態パラメータへの影響を評価します。臨床的に問題となるDDIの可能性があると、その情報提供と注意喚起を行います。

臨床DDI試験は、無作為化クロスオーバー試験、上乗せ試験等により実施します。例えば、被験薬を単剤投与で検討した後に、併用投与を行います。しかし、並行群間比較試験は、個体間変動の影響があるため、一般的に推奨されません。臨床DDI試験は非盲検で実施され、外部対照との比較は原則として行いません。しかし、バイアスを受けやすい薬力学的マーカーの評価が重要な場合は、慎重に比較することも可とします。

 

 

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