ラボにおけるERESとCSV【第34回】
7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
■I社 2016/6/17 483
施設:原薬工場
Observation 1
生データの維持とレビューができていない;
全ての生データを維持するよう規定されておらず、報告されたデータしか維持していない。
分析者は報告しないデータを削除していた。HPLCとGCの電子ファイルを査察調査したところ、多くのクロマトグラムが削除されたり、もしくは報告されていないことが判明した。IRの電子ファイルも削除されていた。
クロマトグラムが削除されたり報告されなかった例;
1) GCのクロマトグラムがコンピュータのゴミ箱に捨てられていた。
そのファイルを復元したところ;
◇ 2015/9/9~9/10に実行したシーケンスファイルが、2016/5/31に
削除されておりその理由は記録されていなかった
◇ 削除されたもののいくつかは2015/9/11に再実行され正式記録と
していた
2) HPLC#15において、2014/2/28にテストし、2014/3/2に再テストした。
さらに、HPLC#16において、3回目のテストを行い正式記録とした。
3) HPLC#16におけるテストにおいて、クロマトグラムが削除され、同じファイル
名のクロマトグラムと差し替えられた
洗浄バリデーション中の微生物テストおよびエンドトキシンテストにおいて、サンプル調製の回数、重量、培地ロット番号、インキュベータに関する生データが維持されていない。
★解説:
データインテグリティに係わる用語を以下にまとめる。
生データとなる電子記録を規定すること
(出典:PIC/S GMP第4章 文書化)
(出典:MHRA データインテグリティ・ガイダンス)
メタデータ
データの意味を理解するのに必要な情報
たとえば「23」という数値は、「mg」といった単位表示のようなメタデータがなければ何の意味もない
(出典:FDA データインテグリティ・ガイダンス)
(出典:PIC/S データインテグリティ・ガイダンス 第7.5節)
(出典:MHRA データインテグリティ・ガイダンス)
(出典:WHO データインテグリティ・ガイダンス 第3章)
(出典:WHO データインテグリティ・ガイダンス 第3章)
HPLCやGCの生データはクロマトグラムだけではなく、シーケンスファイルを含むメソッドファイルや監査証跡も生データとなる。HPLCやGCの生データはダイナミック・レコードであるので、オリジナル・レコードもしくはその真正コピーを電子記録として維持しなければならない。HPLCやGCからのプリントアウトは、電子生データの一部の正確なコピーである。HPLCやGCからのプリントアウトだけでは生データとはならない。プリントアウトといったスタティック・レコードではHPLCやGCによるテスト結果を精査できない。ダイナミック形式の電子生データにより精査する必要がある。
1)項、2)項について
3)項について
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