私が経験したあれやこれやの医薬品業界【第9回】

動物薬事業とファインケミカル事業

1978年に入社以来医薬品の海外事業を中心にあれやこれやの経験を連載してきましたが、動物薬販売とファインケミカル販売の話が抜けていましたので、今回はこの二つの事業の経験談です。
選択と集中が叫ばれる以前は多くの製薬企業が動物用医薬品も、ビタミン・アミノ酸など化成品(現在はファインケミカルという横文字)と呼ばれる領域の製造販売事業もしていました。製薬企業の中では、いわば非主流の事業ですが、医薬品事業とは異なる面白味もありました。

入社して配属になったのが動物薬営業でした。飼料添加剤が主力製品だったので、養鶏場、養豚場、乳牛の牧場など、畜産農家および農協などの畜産団体が主要顧客です。毎月、担当の中国地方5県をその地域の卸の人たちと同行して顧客回りをしました。価格交渉は卸の役割でしたので、薬剤の効果を説明する、MRと同じ役割の仕事でした。
鶏、豚、牛は経済動物ですので、いくら効果がよくても価格が適当でなければ使われません。疾病を治す薬剤ではなく、飼料添加剤は予防する目的で使われていました。今では禁止されていますが、多くの抗生物質、抗菌薬が使われていた時代でした。しかし、換気が悪かったり、多頭飼育などで動物にストレスがかかっていると薬剤投与だけでは疾病は抑えられません。人間と同様、薬剤だけに頼っても健康は維持できません。本来の動物薬営業は、養豚、養鶏、畜産業のアドバイザーの役割も求められる、高度な知識が必要でした。ワクチン接種、飼料効率、繁殖効率改善など他社製品も含めての情報提供、顧客へのアドバイスができる営業が信頼されるMRです。3年間、動物薬営業の仕事をしましたが、その理想形には全く届きませんでした。努力と心構え不足でした。
余談ですが、JRA(当時は中央競馬会)の栗東トレセンも顧客の一つでした。ペットと競走馬は人体薬も使う、家畜とは全く異なる市場です。顧客は獣医なのでMRに求められる役割も異なりました。

旧第一製薬時代に富山県高岡市にあるビタミン原料を製造、販売する子会社(現在の協和ファーマケミカル)に2年ほど(2003~2005年)出向して、主にビタミンB5(パントテン酸)とビタミンB6(ピリドキシン)の海外営業をしました。高岡で生産したビタミン原料およびその誘導体を全世界へ輸出する事業です。
それ以前も、米国駐在時に延べ5年ほどビタミン販売事業にも関わり、そのうち2年は、シカゴ郊外に立ち上げた自社販売会社に駐在して、100%ビタミン事業に関わっていました。トータル7~8年はビタミン事業に深く関わったことになります。

客先は海外の医薬品メーカー、飼料メーカー、食品メーカー、化粧品メーカーで、世界に名だたる大手企業も主要顧客で、このビタミン2品目に関しては競合するグローバル大手企業に伍して世界市場の2~3割のシェアを持っていました。

 

 

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます