WFI製造プロせすへの思い【第20回】

2018/01/19 施設・設備・エンジニアリング

 

 遮断器の手前に「線路内に立ち入るな!」という外国語での音声表示がある踏切を、ニュース番組で紹介していました。我々は、「線路内へ立ち入らない」と決められていることへ何ら疑問を持ちません。
 ところが、線路に立ち入った観光客にインタビューすると、自国では、電車が通らないときは線路内に入って、のんびり休憩する、景色も楽しむと言うのです。
 ところ変われば、いろんな価値観のある人達がいることを知り、決められたことを疑わず、守り通すのが良いのか、自分の判断で決めるのが良いのか、迷いが生じてきました。
 子供の頃に、ピサの斜塔には、国内のテレビ塔のような手摺がないと聞き、「何と、イタリアは自己責任の国」と思っていました。どちらの社会に住みたいか、意見が分かれるところでしょう。
 現在は、ピサの斜塔にも価値観が異なる観光客が増え、大方は手摺が付けられたと聞きますが、世界は広く自己責任の範囲が異なっています。
 
1. WFIは汚染されやすいから
 WFIは「不純物がないこと」を求めていますから、あらゆる汚染から回避しなければなりません。起こり得るすべての汚染からの回避が求められますから、WFIの品質に太鼓判を打たねばならない責任者の心労は、並大抵ではありません。
 決められた事だけ、指摘されたことだけを守る姿勢では、未来に起こり得る汚染というリスクに対処した上での品質を担保することはできません。ここには、自己の責任の範疇を越えて、あらゆる汚染を想定し、対処する姿勢が求められます。
 他の人が決めたこと、行政が決めたこと以上に、自らが注射される人の立場にたって汚染からの回避を、ここで考えてみましょう。
 
2. WFIとおいしい水
 WFIは、注射剤として体内に直に入る水であり、他の製薬用水とは一線を画します。ペットボトル入り「おいしい水」も喉を通って体内に入りますが、WFIとは求められる純度が異なります。
 「おいしい水」の原料となる例えば、神戸六甲山の湧き水と、WFIの純度を比較してみましょう。水に含まれるNaイオン量を比べると、「おいしい水」の原料である六甲山の湧き水が約50,000ppbならWFIは10ppbくらいでしょう。
 ppb:10億分の一を示す単位
 この濃度差から、六甲山の湧き水とWFIはどちらが汚染されやすいか、WFIは六甲山の湧き水よりも5,000倍汚染されやすいと言えるのです。

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執筆者について

布目 温

経歴 布目技術士事務所
技術士 衛生工学部門:水質管理
1972年栗田工業(株)入社、1992年野村マイクロ・サイエンス(株)入社。2011年布目技術士事務所(製薬用水コンサルタント)開設。製薬用水のスペシャリスト。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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