製薬事業所のペストコントロール【第8回】
◆管理プログラムの開発(構築と改善) その1
本稿では、ペストコントロールプログラムを構築し、継続的に改善していくための進め方、その手順について、事例を通じて解説する。有効且つ対外的な説明が容易になるペストコントロールプログラム開発手順の1例である。その概要を以下に示す。
手順1 プログラム構築と改善を担うチームの編成
手順2 立地環境の把握
手順3 施設の把握
手順4 管理対象となる昆虫類の抽出
手順5 管理対象となる昆虫類の生態情報等の収集と整理
手順6 リスクアセスメント
手順7 管理手段の選択
手順8 サンプリング資機材の選択
手順9 許容値の設定
手順10 監視/基準逸脱時の処置の設定
手順11 管理プログラムの改善
手順12 管理プログラムの文書化
この事例以外にも適当な手順は考え得るが、対外的にも自らの組織内にも、論理的かつ科学的な説明が容易な開発手順の一つである。以下に各手順について解説する。
手順1 プログラム構築と改善を担うチームの編成
この手順は、ペストコントロールプログラムを開発し、改善していく専門性を有する人材を選定し、チームとして組織化するために行う。チームメンバーを構成する人材は、当該の施設設備に精通した人材(例えば、工務関連部門のメンバー)、生産計画を担当する人材(入出荷の時刻帯を検討できる部門のメンバー)、製造と製造設備に精通した人材(製造部門或いは生産部門のメンバー)、衛生管理(清掃・洗浄・保守等)を担当する人材(例えば、製造、工務関連部門のメンバー)、前項で述べた学術的な専門家、および原料資材の調達や製品の出荷配送を含むサプライヤー監査に対応する人材を含むことが望ましい。その理由は、昆虫類の侵入繁殖を制御する手段・方策が、入荷する原薬・資材のサプライヤー側の施設の製造環境、自社施設の施設設備の保守管理や清掃・洗浄計画、立地環境によっては製品の出荷時刻、そして原料・資材や製品の保管倉庫の衛生管理などに影響を受けることが少なくないためである。チームメンバーの専門性と能力は手順2以降の結果の精度、特に手順6のリスクアセスメント結果に大きく影響する。このチーム編成で、上述の専門性が期待できない要員を加えてはいけない。
手順2 立地環境の把握
この手順は、非無菌製剤製造区域に侵入する、或いは侵入し繁殖する、どのような昆虫類が周辺環境に棲息し得るかを評価するために行う手順である。開発チームは、まず、当該施設が立地する敷地内及び敷地周辺の環境、即ち、昆虫類のライフサイクルや生態に影響するであろう施設周辺の環境を把握しなければならない。把握すべき周辺環境のパラメーターとは、昆虫類の侵入と繁殖に影響を及ぼす以下のようなものである。昆虫類は土壌中に棲息するもの、水棲昆虫、植物に寄生するもの、他の動物昆虫類に寄生するものなど様々な生態を有する。また、次の手順に重なる要素であるが、昆虫類は敷地内に付設された照明に対する走光性を有していたり、排水路の暗渠を好む特性を有していたりするなど、付設設備にも影響される。これらの要素について、実態を評価することになる。併せて開発チームは、原料・資材を供給するサプライヤーの事業所の立地環境についても同様に情報を収集すべきである。これは原料・資材と共に侵入してくる昆虫類を把握するためであり、特に開発チーム内の監査担当が中心となって実施することになるであろう。
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