いまさら人には聞けない!微生物のお話【第18回】

9. 滅菌バリデーションの全体の流れと実施事項

9.1    バリデーション手順書
滅菌バリデーション手順書は、ISO13485やQMS省令でも作成が要求されているQMS文書の一つです。自社における滅菌バリデーションに関する約束事をすべて記載したものになります。よく言われることですが、ISO13485などには「○○を実施すること」といった要求事項(What to do)が規定されています。しかしその要求事項をどのように自社で展開するか(How to do)は一切記載されていません。その “How to do” は手順書として自社で制定する必要があります。

滅菌バリデーション手順書には、自社でバリデーションを実施する際の責任と権限、実施手順、報告の方法などについて、自社で決め、それを文書化することが必要です。その際に参考として「滅菌バリデーション基準」には、バリデーション手順書に記載すべき事項として、以下が示されています。ただし注意すべきは、滅菌バリデーション基準には、「滅菌バリデーションの手順書に定められる事項の例として、次に掲げるようなものが挙げられる。ただし、これに限定されるものではない。」との付記があることです。これらの項目を参考に、自社でさらに必要と判断される事項は適宜追加する、というスタンスで手順書を制定することになります。

【滅菌バリデーション手順書に記載すべき事項】
①  滅菌バリデーションに係る各業務の責任者の業務範囲及び権限に関する事項

②  滅菌バリデーションの実施時期に関する事項

③  計画書の作成、変更及び承認等に関する事項

④  滅菌バリデーション実施結果の報告、評価及び承認に関する事項(記録方法も含む。)

⑤  滅菌バリデーションに関する文書の保管に関する事項

⑥  この基準に定める日常の滅菌プロセスの管理に関する事項(ただし、製品標準書(作業手順書を含む。以下同じ。)に明確に規定されており、かつ滅菌バリデーションの手順書に製品標準書の規定に基づき実施する旨記載されている場合を除く。)

⑦  その他必要な事項

薬生監麻発0215第13号 「滅菌バリデーション基準」より引用

9.2    バリデーション責任者の指名とチームの編成
滅菌バリデーションは、様々な作業が伴いますので、一人の担当者ですべてカバーできるわけではありません。工場の規模、滅菌装置のサイズや仕様、製品の特性等にもよりますが、通常は何人かのチームで取り組みます。そのバリデーションチームのリーダーがバリデーション責任者として当該バリデーションをリードするのが一般的です。バリデーション責任者の責務は、バリデーション手順書に記載すべき事項の一つです。

バリデーション責任者は、非常に責任の重い立場です。「滅菌バリデーション基準」では、バリデーション責任者の責務の一例として、以下が挙げられています。

①    滅菌バリデーションの手順書に基づき製造しようとする製品についての滅菌バリデーションの実施計画書(以下「計画書」という。)の作成

②    計画書に従い実施する次の滅菌バリデーション

  1.  製造販売承認(認証)を受けるとき及び「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和35年法律第145号。以下「法」という。)第80条第2項に規定する輸出用医療機器を製造しようとするときに受けなければならない適合性調査に当たって実施するこの基準9による滅菌バリデーション
  2. 製造販売承認(認証)取得後及び法第80条第2項に規定する輸出用医療機器の製造開始後5年ごとに受けなければならない適合性調査に当たっては、次の滅菌バリデーション
    • この基準9による滅菌バリデーション
    • この基準12による適格性の再確認

③    滅菌バリデーションの結果の判定及び無菌性を保証していることの確認

④    滅菌バリデーションの記録の作成及び保管

⑤    日常の滅菌プロセスの管理の実施

なおQMS上の要件として、バリデーション責任者、担当者の要件や力量は、前もって規定し、必要に応じて教育訓練などを行う必要があります。

9.3    バリデーションマスタープラン
バリデーションマスタープラン(VMP)は、必ず作成しなければならない、というものではありません。新たに工場を建設し、そこに新たに滅菌装置を導入するような場合は、滅菌工程以外にも様々なバリデーションを実施することになりますので、すべてのバリデーションの要件を総括する文書としてバリデーションマスタープランを作成します。しかし既存設備を使った定期的な滅菌バリデーションが対象の場合は、バリデーションマスタープランは作成しないことが多いと思います。
これもバリデーション手順書の中で規定しておくといいでしょう。

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