再生医療等製品の品質保証についての雑感【第25回】

2021/05/14 再生医療

水谷 学

【著者セミナー】
同種由来の細胞加工製品における品質設計と外工程に関わるポイント
~生物由来原料の調達からコールドチェーンまで~

※Web受講のみ
●日時:2021年6月10日(木) 10:30-16:30



はじめに
 本稿では、引き続きQuality by Design(QbD)についてお話しをします。前回、細胞加工製品の開発では、製造に向け定められる重要品質特性(CQA)が、治験に向けて定められた製造工程におけるデザインスペース(DS)および重要原材料特性(CMA)と重要工程パラメータ(CPP)に紐づけられる概念を紹介しました。このような製品では、製品の品質設計と工程設計をどのように関連付けて進めるべきか、細胞を製品とする場合における考え方と課題について雑感を述べさせていただきます。


● あらためて細胞加工製品の工程設計とCQAの関係について考えてみる
 細胞加工製品のCQAは、品質(細胞)を評価する技術が現状では十分ではないため、従来の製剤開発とは異なり、QTPPの要求を満たすか否かの判断基準を、単独の評価指標で示すことが難しいです。そのため、治療に関わる品質(製品)の設計時において想定されるCQAは、ラボスケールあるいはベンチスケールで調製した試作から得られる暫定的な指標であると認識します。理由として、指標の解析方法あるいはその解像度が現状では十分ではなく、培地など原料等や製造方法に伴う手順等が品質に与える影響をQTPPやCQAから判断することが難しいため、暫定CQA決定の前提として工程設計に関わるCMAおよびCPPが予め定められた範囲(DS)に収める必要性が生じるためと考えます。CQAの決定には、予め製品のライフサイクルを通して製造方法や原料等の調達管理を考慮し、コマーシャルスケール(パイロットスケール以上)において想定するCQAが現状(ラボあるいはベンチスケール)のDSおよびCMA、CPPと相関が得られることを確認することが不可欠と考えます。すなわち、細胞加工製品開発においてCQAを決定するための評価(治験)はコマーシャルスケールを想定したDS等を定めた後で行う必要が示唆されるため、工程設計は製品設計(治験前)に含まれると考えられます。これは、製剤開発における工程設計とでは位置づけ(開発手順)が大きく異なることを意味しています。

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執筆者について

水谷 学

経歴

大阪大学 大学院工学研究科 講師。
1997年群馬大学大学院工学研究科博士後期課程を中退。国立循環器病センター研究所生体工学部にて生体適合性材料の研究を行った後、株式会社東海メディカルプロダクツにて循環器用カテーテルの開発および製造に関わる。2004年より株式会社セルシードにて再生医療に係る開発および品質保証を担当し、臨床用細胞加工物の工程設計や細胞培養加工施設の設計と運用を実施。東京女子医科大学での細胞シート製造装置開発を経て、2014年より現職。細胞製造システムの開発に従事。工学研究科の細胞製造コトづくり拠点において、細胞製造コトづくり講座(社会人教育)および標準化・規制対応に関わる共同研究を担当。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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