ラボにおけるERESとCSV【第79回】
FDA 483におけるデータインテグリティ指摘(49)
7.483における指摘(国内)
前回より引き続き、国内企業に対するFDA 483に記載されたデータインテグリティ観察所見(Observation)の概要を紹介する。
■ OOO社 2019/9/6 483
施設:原薬工場
■Observation 1
原材料、中間体および製品のテストに使用しているHPLCの監査証跡レビューが不適切である。貴社の監査証跡レビューにおいては、すでにバッチ製造記録に記載されているデータを確認しているだけである。レビューに提出されたデータが原本であり正確であることを保証できる監査証跡レビューとなっていることをQAは説明できなかった。
指摘1: 監査証跡レビューにおいては、すでにバッチ製造記録に記載されて
いるデータを確認しているだけである
指摘2: データが原本であり正確であることを保証できる監査証跡レビュー
となっていることをQAは説明できなかった
★解説:
本指摘に関する用語を説明する。
◆ 生データ
PIC/S GMP 「第4章 文書化」における生データの定義
- 少なくとも、品質判定に用いる全てのデータを生データと規定すること
- 生データとなる電子記録を規定すること
厚労省「GMP事例集(2013年版)GMP20-5 」における定義
- 最終結果を得るために使用した元となるデータ
- 最終結果を得るに至った過程を含む記録
- 最終結果を検証することができるもの
従来は生データを「最初にとらえた情報」と規定していたかもしれないが、GMPにおける現時点での生データ定義は上記のとおりである。
◆ メタデータ
メタデータとはデータの意味を理解するのに必要な情報のことである。データの数値だけでは何を意味するのかわからない。たとえば「23」という数値は、「mg」といった単位表示のようなメタデータがなければ何の意味もない。データを収集した日時のタイムスタンプ、データを生成したテストや分析を実施した人のユーザーID、データ収集に使用した機器のID、監査証跡などもメタデータとなる。
(出典:FDAのデータインテグリティガイダンス §3-1b)
メタデータも生データである。
◆ ダイナミック・レコード (動的記録形式の記録)
データ処理、データ解析、データ拡大表示ができるような動的記録形式の記録。例えば、電子的に維持されているクロマトグラフィのオリジナル・レコード。
(出典:MHRAのGXPデータインテグリティガイダンス §6.11.1)
オリジナル・レコードが電子的なダイナミック・レコードである場合、オリジナル・レコードもしくはその真正コピーを電子的に維持しなければならない。
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