GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第42回】
1.医薬品品質システム維持
小林化工や化血研の事件にて、品質システムが適正に稼働していなかったことが取り上げられている。GMP省令改正1)において、QA業務を担う部署が求められている。ICH Q102)として、医薬品品質システムの構築は、すでに求められていた。しかし、品質や安全性は、目に見えるものではなく、通常業務としては、脚光を浴びる部署ではない。査察や監査の対応者として、逸脱やクレームの処理係程度にしか認識していない経営陣も少なからずいることだろう。今回のような事件が発生すると、品質システムとしての問題として、QA部署がどのような活動を行っていたか問われることになる。
GMP省令3)で、「品質部門は、製造部門から独立していなければならない。」と規定されている。何故、独立していなければならないのか。品質部門であるQC(試験検査を担う部署)及びQA(品質保証を担う部署)はどちらも判定を行わなければならない組織である。
QCは試験検査に関しての判定であり、QAは出荷可否判定や逸脱処理、変更管理など多くの判定業務を担っている。品質部門は、スポーツの試合での審判員でなければならないと私は思う。実は、私は藤沢市少年野球の審判員をしていたが、少年野球チームから審判員の研修を受けた者が、市大会の審判をしていた。ただし、自分が所属するチームの試合は審判をすることができないことになっていた。それは、審判員として、公正な立場で判定ができない可能性があるからである。審判員は、どちらのチームに対しても、公正で中立な立場でなければならない。神戸製鋼が顧客との基準に不適であった製品の検査データを適合したかのように改ざんした事件があった。医薬品では、このような事件が起きないようGMPで、品質部門の独立を求めている。品質部門の独立は、日本だけではなく、海外のGMPでも求められている。しかし、安定供給を理由に、納期が迫った出荷可否判定などを急かされることも多いだろう。いくら急かされても、不十分なチェックにならないよう品質部門は努めなければならない。それが、品質部門が製造部門から独立していなければならない理由である。

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