医薬品のモノづくりの歩み【第34回】
執筆者関連書籍「医薬品製造におけるモノづくりの原点と工場管理の実践」
安定操業の礎ともいうべき安全衛生と環境保全(2)
前回に続けて、今回は環境保全についてお話しします。
私たちの身のまわりには、プラスチックや合成洗剤、殺虫剤、医薬品、化粧品、農薬等、数多くの製品があふれていますが、これらはすべて様々な化学物質を利用して作られており、化学物質は私たちの生活になくてはならないものになっています。このように有用である化学物質も、その製造、使用、流通、廃棄の各段階で適切な管理が行われなかったり、事故が起きたりすれば、深刻な環境汚染を引き起こし、人の健康や生態系に有害な影響をもたらすものもあります。
医薬品工場においても、多くの種類の化学物質を取り扱い、製造しています。従って、図1に示したように操業していく中で環境に影響を与える様々なリスクを持っています。例えば、化学物質の集塵フィルターからの飛散や廃液などの漏洩は、大気や河川、土壌の汚染リスクとなりますが、工場ではそれだけではなく、動力設備がもたらす騒音や振動、製造で発生する臭気は近隣環境に影響を及ぼします。地球規模では、地球温暖化をもたらすCO2放出や大量消費による廃棄物の発生も挙げられます。
そもそも、環境問題とはなにかと言うことですが、人間が自然に対して、過剰に接触したことにより環境に悪影響を及ぼす問題ということです。
もともとは人も自然の一部であり、与えられた環境の中で自然と共存していましたが、いつからか人間は環境を歪める存在となってしまいました。では、いつから環境問題と言われるものが始まったのでしょう。
日本を例に挙げれば、明治時代の近代化政策とともに大気汚染が始まりましたが、第二次世界大戦後の工業復興で大気汚染問題が引き起こされます。1955年からの好景気下では、工業都市の工場ばい煙による大気汚染が、住民に深刻な健康被害を引き起こし、大きな社会問題へとなっていきました。水質汚染でも、工業廃水が河川を汚染し、イタイイタイ病や水俣病など悲惨で深刻な公害問題を引き起こしました。これらの問題に対応するため公害対策基本法などの環境法が整備され、更に1971年には環境庁(現・環境省)が発足して、公害対策の必要性が民間企業にも広がっていきました。省資源・省エネルギーへの取り組みも進み、産業活動によってもたらされる公害が減少していきますが、変わって、人口増加と集中、生活水準向上によってもたらされる都市・生活型の環境問題がクローズアップされていきました。
近年では、成層圏のオゾン層破壊や地球温暖化、生物多様性の減少などの環境問題が世界共通の課題になり、先進国と開発途上国が協力して地球規模の環境問題に取り組むことが求められてきています。1)2)
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