ジェネリック医薬品の四方山話【第8回】

~ジェネリック各国事情~

 さて連載もそろそろ終わりに近づいてきた。ここからはヨーロッパ各国の後発医薬品事情に目を転じよう。日本のジェネリック医薬品の特許切れ品に占める普及率は70%である。実は、わが国のジェネリック医薬品の普及促進策の目標とされているのがフランスである。というのもフランスは2000年時点ではジェネリック医薬品普及率が、当時の日本の普及率の11%の半分にも満たない日本より遅れたジェネリック後進国であったのだ。それが2006年には日本を追い越し、今や日本はフランスの後塵を拝してその後ろ姿を追いかけているありさまだ。
 

図表 日仏ジェネリック医薬品シェア推移

 

 何がフランスでおきたのだろうか?実はフランスは日本とジェネリック医薬品を取り巻く環境が良く似ている。フランス人も日本人もブランド品が大好きだ。それに日本と同じようにフランスの医師の自由裁量権が大きく、また患者による医師選択の自由であるフリーアクセスも日本と同様に保障されている。さらに医師の開業の自由と処方の自由が確保されていることなど両国には共通点が多い。
 しかしそんなフランスにも時代の流れが押し寄せる。フランスにおける後発医薬品普及の転機は、1995年の医薬品経済委員会(CEM)のジャン・マルモ委員長の答申書だった。この答申書がジェネリック医薬品の普及のアクセルとなった 。これ以降、1999年に薬剤師による代替調剤が認められ、さらに薬局におけるジェネリック医薬品のマージンを先発医薬品と同等にする優遇措置も導入された。
 そして2002年、社会保障財政法により 一般医の診察料を値上げするかわりに一般医に後発医薬品の処方の目標数値を課すことになった。そして2003年、ついに後発品の平均価格を標準償還価格とするいわゆる「参照価格制度」がフランスにも導入される。これによって患者は先発医薬品を選択すると後発品との差額を自己負担分に上乗せされることになった。このため患者は自己負担増を嫌ってジェネリックを選択するようになった。
 日本でもこれと同じように、ジェネリック医薬品と特許切れの長期収載品の価格差を患者自己負担分に上乗せするという提案が、今年、来年の診療報酬改定を審議している中医協で厚労省から提案された。しかし中医協では、患者自己負担増を医療側の委員も支払い側の委員も嫌って、今のところ実現はしていない。
 またフランスではこうした矢継ぎ早の後発医薬品の政策導入を行うと同時に、大規模な政府広報による後発医薬品のキャンペーンを行った。こうしたさまざまなジェネリック推進政策のおかげで2006年に、あっという間にフランスは日本を抜き去ったというわけだ。
 そしていまや日本がそのフランスの後を追っている。しかしその差は今や開くばかりだ。というのも、その後フランスではさらなる後発医薬品推進策を次々に打ち出しているからだ。その代表例が、後発医薬品P4Pだ。P4PとはPay for Performanceといって、医療における成果払いのことで、診療所医師に対しては、抗生剤、PPI,スタチン、降圧剤、抗うつ剤などの薬効群ごとに後発医薬品処方率の目標を設定して、それをクリアすると報奨金を与えるという制度を導入した。
 また薬局薬剤師に対してもやはり薬効群ごとに後発医薬品調剤率の目標値を設定して、それをクリアすれば報奨金が支払われるという薬局P4P制度を導入した。なおP4Pの財源には後発医薬品による医薬品費節減額を当てたという。こうした後発医薬品に対する薬効群別P4Pの導入もあって、ますますフランスと日本の後発医薬品普及率の格差が広がっている。
 先述したように日本とフランスは国民性や社会保障制度面でよく似ている。そのフランスにできたことが日本でできないわけはないと思うこのごろだ。
 

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます