ジェネリック医薬品の四方山話【第5回】
~アミオダロンのジェネリック医薬品に対する不信・不安~
この連載でも専門医のジェネリック医薬品に対する不信・不安を取り上げたことがある。今回も循環器の専門医が抗不整脈薬のアミオダロンのジェネリックに抱いている不信・不安について取り上げてみよう。
アミオダロンは、重症不整脈に必須な抗不整脈薬であるが、治療域が比較的狭く、重篤な副作用の発現も懸念される。またアミオダロンは血中半減期も長く、血中濃度の定常状態に達するまで長時間を要する。こうした薬剤特性のため、また以下にあげる不安感から、わが国ではアミオダロンのジェネリック医薬品に対する専門医の不信感が払しょくできないでいる。
専門医の懸念は「アミオダロンのジェネリック医薬品の原薬・製剤の品質は先発品と同じなのか?」、「アミオダロンのジェネリック医薬品の承認時の生物学的同等性試験は、健常人を対象とした単回経口投与試験であり、長期投与の検証がなされていない。このため長期投与の患者においても、ジェネリック医薬品は先発と血中濃度推移と同等であるのか?」、 また「先発品を使っている途中で、ジェネリック医薬品に切替えると異なった血中濃度推移を示すのではないか?」など。
こうした不安は実は海外でも見られていて、以上のような懸念から、アミオダロンの先発品とジェネリック医薬品の比較検証が数多く行われている。その結果、アミオダロンのジェネリック医薬品に対して、否定的な見解を示す論文も多い。このような論文のいくつかを紹介しよう。
アミオダロンのジェネリックに否定的な論文の例(文献1)を取り上げて見よう。この論文のポイントとなる図1において、著者のPollakは以下の指摘を行っている。
図1は、アミオダロンの先発品からジェネリック医薬品へ切替えた際に、アミオダロンとその活性代謝物デスエチルアミオダロンの血中濃度の比の変化を見た4例 を示したグラフである。縦軸は、DEA/AMD比率、横軸はアミオダロン服用期間である。グラフ下段の曲線と点線(水平線)は、同一著者らによるアミオダロン先発品長期投与77例(平均観察期間2年)のデスエチルアミオダロン/アミオダロンの比で、点線は、先発アミオダロン製剤投与の定常状態における同比の95パーセンタイルラインである(出典:Pollak PT, et al. Clin Pharmacol Ther. 2000, 67: 642-652. )。
今回のアミオダロンの先発品からジェネリック医薬品切り替え患者4例は、ジェネリック医薬品投与中のデスエチルアミオダロン/アミオダロンの比は全て95パーセンタイル値を上回っており、先発品へ戻すと、その数値が正常化していたということを示している。このグラフを見る限り、アミオダロンのジェネリック医薬品への切り替えで血中濃度が大きく変化したような印象を受ける。
しかしこの4症例について、われわれは論文中の別の表から、先発品からジェネリック医薬品への切り替え前後のアミオダロンおよびデスエチルアミオダロンの血中濃度の絶対値の変化をグラフ化して見てみた。それが図2である。このグラフでみると、先発品→ジェネリック医薬品→先発品の3点で血中濃度を測定している例のうち、デスエチルアミオダロン血中濃度がジェネリック医薬品に切り替えで上昇した1例以外は、血中濃度の絶対値の変化はさほど大きくはないことがわかる。いずれにしても切り替え前後の3ポイントで測定した症例が2例しかないこともあってその前後の統計的な有意差検定も行うことはできない。つまりアミオダロンとデスエチルアミオダロンの絶対値の変化でみれば切り替え前後の変化はすくなく、また少数例の事例報告であるため論文のエビデンスレベルも低いといえる。この論文の意図するところは、わざわざデスエチルアミオダロンとアミオダロンの比率で比較することで、ジェネリック医薬品と先発品の血中動態の差を意図的に強調して見せようとしたとしか考えられない。
図2
この連載でも専門医のジェネリック医薬品に対する不信・不安を取り上げたことがある。今回も循環器の専門医が抗不整脈薬のアミオダロンのジェネリックに抱いている不信・不安について取り上げてみよう。
アミオダロンは、重症不整脈に必須な抗不整脈薬であるが、治療域が比較的狭く、重篤な副作用の発現も懸念される。またアミオダロンは血中半減期も長く、血中濃度の定常状態に達するまで長時間を要する。こうした薬剤特性のため、また以下にあげる不安感から、わが国ではアミオダロンのジェネリック医薬品に対する専門医の不信感が払しょくできないでいる。
専門医の懸念は「アミオダロンのジェネリック医薬品の原薬・製剤の品質は先発品と同じなのか?」、「アミオダロンのジェネリック医薬品の承認時の生物学的同等性試験は、健常人を対象とした単回経口投与試験であり、長期投与の検証がなされていない。このため長期投与の患者においても、ジェネリック医薬品は先発と血中濃度推移と同等であるのか?」、 また「先発品を使っている途中で、ジェネリック医薬品に切替えると異なった血中濃度推移を示すのではないか?」など。
こうした不安は実は海外でも見られていて、以上のような懸念から、アミオダロンの先発品とジェネリック医薬品の比較検証が数多く行われている。その結果、アミオダロンのジェネリック医薬品に対して、否定的な見解を示す論文も多い。このような論文のいくつかを紹介しよう。
アミオダロンのジェネリックに否定的な論文の例(文献1)を取り上げて見よう。この論文のポイントとなる図1において、著者のPollakは以下の指摘を行っている。
図1は、アミオダロンの先発品からジェネリック医薬品へ切替えた際に、アミオダロンとその活性代謝物デスエチルアミオダロンの血中濃度の比の変化を見た4例 を示したグラフである。縦軸は、DEA/AMD比率、横軸はアミオダロン服用期間である。グラフ下段の曲線と点線(水平線)は、同一著者らによるアミオダロン先発品長期投与77例(平均観察期間2年)のデスエチルアミオダロン/アミオダロンの比で、点線は、先発アミオダロン製剤投与の定常状態における同比の95パーセンタイルラインである(出典:Pollak PT, et al. Clin Pharmacol Ther. 2000, 67: 642-652. )。
今回のアミオダロンの先発品からジェネリック医薬品切り替え患者4例は、ジェネリック医薬品投与中のデスエチルアミオダロン/アミオダロンの比は全て95パーセンタイル値を上回っており、先発品へ戻すと、その数値が正常化していたということを示している。このグラフを見る限り、アミオダロンのジェネリック医薬品への切り替えで血中濃度が大きく変化したような印象を受ける。
しかしこの4症例について、われわれは論文中の別の表から、先発品からジェネリック医薬品への切り替え前後のアミオダロンおよびデスエチルアミオダロンの血中濃度の絶対値の変化をグラフ化して見てみた。それが図2である。このグラフでみると、先発品→ジェネリック医薬品→先発品の3点で血中濃度を測定している例のうち、デスエチルアミオダロン血中濃度がジェネリック医薬品に切り替えで上昇した1例以外は、血中濃度の絶対値の変化はさほど大きくはないことがわかる。いずれにしても切り替え前後の3ポイントで測定した症例が2例しかないこともあってその前後の統計的な有意差検定も行うことはできない。つまりアミオダロンとデスエチルアミオダロンの絶対値の変化でみれば切り替え前後の変化はすくなく、また少数例の事例報告であるため論文のエビデンスレベルも低いといえる。この論文の意図するところは、わざわざデスエチルアミオダロンとアミオダロンの比率で比較することで、ジェネリック医薬品と先発品の血中動態の差を意図的に強調して見せようとしたとしか考えられない。
図2
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