その数字って本当?(ニュースを透かして見てみる)【第5回】

■犯罪白書はどこまで信用できる?

 例えば、約5年前の読売新聞を読むと、次のような記事がありました。
「とうとう、不良老人がそのうち不良少年を席巻する時代がやってきたか!」とは思わなかったのですが・・・さて、以下の記述を見て、皆様はどう思うでしょうか?
 

 「埼玉県で高齢者の万引きが急増している。同県内で警察に摘発された65歳以上は昨年、1145人と過去最多で、全体の4人に1人が高齢者だった。県警によると、2004年に摘発された65歳以上の高齢者は646人で、万引き犯全体(4479人)の14.4%だった。2006年に1000人を超えると、2008年は過去最多の1145人を記録。全体(4850人)の23.6%にまで増え、少年(14~19歳)の1426人に迫る勢いだ。
 今年も5月末までに447人の高齢者が摘発され、昨年同期の468人をやや下回る程度で推移している。

 ある県警幹部は、「生活苦が理由の万引き犯もいるが、ほとんどはお金を持っている。『万引きは犯罪』という規範意識や道徳心が薄れてきているのが、増加の一因ではないか」と分析する。  筑波大の土井隆義教授(逸脱行動論)は、「高齢者だけの世帯が増え、孤立化が進んでいる。地域社会の行事などへ参加を促し、役割を果たしてもらうことも犯罪抑止に効果がある」と話している。

 警察のプロファイリングでは、「高齢者の道徳心が薄れてきている」ために犯罪が増加、大学の先生は、「高齢者だけの世帯が増えて、孤立化した」ために犯罪が増加したのではないかと推測しています。
 各都道府県の警察ホームページを見ると、必ず地域の犯罪白書が掲載されています。地域限定の情報なので、他の地域と比較してどうこう言うと「縄張り」問題になりそうですね。


■高齢者の犯罪増加はホント?

 さて、このニュースをそのまま読むと、社会学的な問題として、孤独な高齢者が増えた上に道徳心が希薄になったために犯罪が増えているということでしょう。

 解決策が載っていないので、どうしたら高齢者犯罪が減るのかはわかりませんが、果たして近年、高齢者の方々が急に道徳心がなくなったりするものでしょうか?
また、それであれば別に埼玉の問題だけではなくて、全国的に起こっている問題として取り上げられるものではないかな?なんて思ったりします。

 これを別の角度で考えてみると、平均寿命が年々、延びており今や世界一であることは間違いありません。(平成26年の日本人の平均寿命は男性が80・50歳、女性が86・83歳で、ともに過去最高を更新)
 また、少子化により子供の数が減少傾向にあることも確かでしょう。私なら、単純にこれだけの情報だけでも、高齢者犯罪が増えたのは単純に「65歳以上の高齢者が増えたから」じゃないの?と考えます。
 
 最近は、青少年犯罪の凶悪化などもワイドショーを賑わせていますが、評論家によっては、過去のデータを引き合いに出して、「むしろ減少傾向にある」という解説をよく見ます。ただ、増加派も減少派もお互い都合のいいデータを出してきますから、今のところどっちかよくわかりません。犯罪件数のみならず、警察側の検挙率なんかも影響しますし、犯罪自体の性質も変わってきているようです。

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