エチレンオキサイド滅菌の実践知識【第5回】
滅菌工程は、およそ次のような段階を経て最終的に確定されます。
1. 滅菌工程中の圧力
本事例では20%EOと80%CO2の混合ガスを使うため、滅菌時のEO濃度は、ガス投入前の減圧度や缶体内の温度にもよりますが、滅菌圧力が150kPa ではおよそ450mg/L、200kPaでは600 mg/L、250kPaでは800 mg/Lほどになります。
今回は滅菌中のEO濃度の目標値が600gm/L ですので、滅菌圧力を200kPa とします。
2. 調湿工程
滅菌中の器内の湿度の目標値は50%、調湿用の蒸気は滅菌室に隣接して設置しているクリーンスチーム発生装置より供給されるものとします。
50℃における飽和水蒸気圧は約12.3kPaですので、滅菌器を12.3kPa以下まで減圧した状態で水蒸気を投入することで、50℃の温度管理が可能になります。 最終的に50℃で50%RHの湿度を得るために、水蒸気分圧が6.15kPaになるように蒸気を投入することにします。
なおこの調湿工程で製品の温度が決まるため、最終的に6.15kPaになるように、数度に分けて蒸気を投入し、温度の均一性を確認します。
製品の性状や積載状態にもよりますが、通常は4~5回蒸気の投入 / 減圧を繰り返すことで、一定の温度分布を得ることができます。 最適な条件は、何回かのトライ&エラーを繰り返して見つけ出す必要があります。
なおこの調湿・調温工程(コンディショニング)については滅菌装置メーカーが様々なノウハウを持っています。 社内に専門的な知識を持っている人がいない場合には、メーカーの技術者にアドバイスいただくことも有益です。
3. リークチェック
EOは毒性の高いガスです。 そのため通常はEO投入に先立ち、リークをチェックするための工程を入れます。 一般的にはコンディショニング後の減圧状態で一時的に真空ポンプや蒸気供給などをすべて停止し、滅菌器内の減圧度に変動、すなわち外気の滅菌器内への侵入が無いことを確認します。 たとえば10分間に1kPa以上器内圧が上昇した場合にはリークがあると判断し、工程をキャンセルするなどの対応を取ります。
4. EOガスの投入
調湿後、EOを60℃に保ったガス気化器(この温度条件も、何回かのテストを行う必要があるかもしれません)を通して滅菌器内に投入します。
滅菌圧力は200kPaですので、EOガスは12.3kPaから200kPa まで供給するものとします。 その時の滅菌器内の温度が50℃である時、EO濃度(理論値)は、以下の通りとなります。
EO濃度(mg/L) = KP/RT = 8800×1.85245÷(0.082×323)≒615 mg/L
K : 投入したガスの標準状態における1モル中のEOの重量(mg) EO、CO2はともに分子量はおよそ44であるため、20%EO / 80%CO2 の標準状態の混合気体1モル中のEO含量は、44g の20%、すなわち8.8g = 8800mg となる。
P : ガスの投入時の圧力上昇(atm)
ここでは 200 - 12.3 = 187.7kPa = 1.85245atm
R : 気体定数 0.082
T : 温度(絶対温度) 50℃=323K
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