ラボ・生産設備における省エネルギー化【第9回】
1 はじめに
今回はGLP施設に関する諸設備の省エネルギー対策について述べます。
GLP《 good laboratory practice 》とは、医薬品や食品の安全性を評価する検査や試験が正確かつ適切に行われたことを保証するための基準。安全性評価試験の信頼性を確保するため、試験施設が備えるべき設備、機器、組織、試験の手順等について基準を定めたもので、日本では薬事法による新医薬品等の開発のために行われる非臨床試験(動物試験等、特に安全性試験)のデータの信頼性を確保するための実施基準として導入された。日本語では「優良試験所規範」や「優良試験所基準」などと訳されます。(ウィキペディアより)
GLP施設はエネルギー消費量で見てみると空調換気設備が大きな割合を占めています。今回はGLP施設の空調換気設備に焦点を合わせ課題と省エネルギー対策について述べます。
2 GLP施設の空調換気設備の特徴
GLP施設の空調換気設備の特徴について述べます。
2.1 動物実験室
動物実験室は扱う動物と実験の種類、菌の有無により分類されおりマウスラットではノートバイオート、SPF、ジャームフリーなどに分類されます。実験のレベルにより空気清浄度はクラス100~100,000の範囲、温度範囲は23±2℃、湿度は50±10%が一般的です。
また実験動物室は排泄物等の影響でアンモニア濃度が高くなり実験作業者が快適な環境で実験を遂行するには適正な濃度に管理することが求められます(実験動物飼育ガイドラインでは25ppm以下)。また動物のストレス軽減のためにも濃度制御を行い一定の数値以下とすることが必要です。このための空調換気回数はおおよそ8~15回/時程度で、しかも空気は循環させず、全て外気であることから熱源負荷としては一般業務用空調に比べ数倍で、しかも24時間連続稼働であることから年間の空調消費エネルギーは大きいものとなります。また個別に室の温湿度を制御する為に冷却減湿操作及びヒーターで再熱制御していることなども負荷増大の要因で、さらに温度及び湿度範囲を非常に狭い範囲に制御する場合には大きな風量が必要となるため消費エネルギーの増大につながります。
2.2 感染動物実験室
感染動物といえども温度湿度条件はその他の飼育室と同様に運転管理されています。ただ室内は外部に対して20~50Pa以上の負圧を要求され室内雰囲気が外部に漏れないように配慮されます。実験者に対してもケージ、解剖台操作で感染しないように安全キャビネット内での飼育及び実験操作を行い、気流を制御することで汚染及び感染を防止しています。空調は感染動物を扱っているので臭気のみならず、空気に対する交差汚染が無いように全外気空調システムとなる場合が多いようです。
2.3 RI実験室
ラジオアイソトープを扱うので、キャビネット内操作が原則です。排気は全てHEPAフィルターでろ過され大気に放出され、感染動物実験室と同様に内部雰囲気が外部に漏出しないように負圧で室内圧が管理されます。ドラフトチャンバーからの排気変動が室圧を変化させるため室圧が一定となる工夫が必要となります。
2.4 化学実験室
合成実験などに用いられるため、薬品、有機溶剤などを扱うフードキャビネットが不可欠となり、導入外気量が多量となるため空調負荷が増大する傾向にあります。またフードが間歇運転をする場合には室内圧が不安定になり室内から臭気、薬品、有機溶剤等が流出する原因となり、逆に室内が負圧の場合には外気塵埃を室内に流入させる結果にもなります。
2.5 分析実験室
薬効などを分析する機器機材が多く、稼働中は冷房負荷が大きくなる傾向にあります。機器発熱、設置場所、使用頻度などにもよりますが年間冷房の可能性もあり系統選定には注意を要します。
各実験室における空調設備の特徴を述べましたが、ほとんどのケースは臭気対策とドラフトチャンバー等の運転のため外気導入量が大きく、空調負荷の増大と室圧変動の抑制がGLP施設での空調設備の大きな特徴となっています。
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