医薬品設備建設における「オーナーのプロジェクトマネジメント2nd改訂版」【第13回】
1. はじめに
2. プロジェクトステージの概要
3. 何をマネジメントするか
4. プロジェクト計画に関連する主要な問題点
5. プロジェクトマネジャーの役割と責務
6. プロジェクトマネジャーの資質
7. プロジェクトで使用することば
8. 外部への依頼範囲
9. コントラクターとの契約、および訴訟を意識したマネジメント
10. FS(Feasibility Study)ステージ
11. 基本計画(概念設計)ステージ
12. 基本設計ステージ
13. 発注方式
14. 変更のマネジメント
15. 詳細設計ステージ
16. 製作・施工ステージ
第2項の表2.1に記載したが、製作・施工とは詳細設計に基づき機器類の工場製作・搬入、現場での建設工事を行うステージである。通常は、サプライヤーや施工会社によって、当該設備・施設の工場製作、現場での施工、およびそれらの製作検査・工事検査を行う。施工段階というのはプロジェクトの中で、コスト、工数の最も多くかかるステージであり、それだけに多くのリスクが潜んでいるといえる。しかし、製薬企業側は施工マネジメントについてあまり関与していないのが実情である。
また、製作・施工のステージと試運転ステージとの区切りは、企業などによって異なるが、ここではISPE日本本部EM COPでは以下のように定義しており、ここではそれに従う。
現地工事に対する最終的な各検査試験は現地工事検査のカテゴリー(試運転ステージ)に含む。
(1) 製作
① ベンダーアセスメント(サプライヤーアセスメント)
機器類について、製薬会社からコントラクターへ一括発注している場合は、コントラクターが主体となって機器などの発注先に対するベンダーアセスメントを行う。一括発注でない場合は製薬会社がベンダーアセスメントを行う。いずれの場合であっても、アセスメントの主な内容は以下である。
- ベンダーまたはサプライヤーの経営状況
- ユーザー要求や仕様書の実現を可能とするための技術や資格の有無
- サプライヤーの納期管理能力や製作管理能力、リソースの状況
- サプライヤー側の品質システム
- サプライヤー側のGEPの取り組み
- サプライヤーの同種の機器などに対する実績
- サプライヤーの医薬品設備に対する知識、実績
- サプライヤーの自主検査能力およびドキュメント作成能力(クオリフィケーションやバリデーションの対象となる機器などについては、ドキュメントの参照先として使用できるレベルにあるかどうかを評価する)
- 稼働以降のサプライヤーのメンテナンス体制(部品の供給体制を含む)
医薬品設備のベンダーまたはサプライヤーとして使用できるかどうかを、これらのアセスメントにより判断する。このベンダーアセスメントはベンダーへの発注以前に行われなければ意味をなさない。
② 製作図
機器、計器、電気品、配管や建設材料の工場製作品、その他部品などは、メーカーなどの工場にて製作される。製作は、製作仕様書や製作図に基づき実施される。しかし、一般には製薬企業側へは製作図そのものが提出されないままで製作が行われる。すなわち、製薬企業側は、製作図レベルではない詳細図しか受領していない。したがって、詳細図には製薬企業側の要求する事項は全て網羅しておく必要があり、仮にその要求事項が不明確であれば、製作品が必ずしも製薬企業の要求どおりに完成するとはいえない。前ステージの詳細設計における詳細図の承認が如何に重要であるか、おわかりになるだろう。
また、機器の各部品の材質が直接医薬品の原料や製品などと接触する場合を考えると、仮に材質が要求されたものではなく異なるものになっていたとすると、医薬品の品質や患者へ安全性への影響が考えられる。また、材質といっても高分子系の材料においては、その中にふくまれる微量成分にまで注意を払う必要がある。医薬品の品質と患者の安全性については、製薬企業が保証しなければならない事項であり、医薬品を製造する設備・機器などの材質については、コントラクターやベンダー任せでは不十分である。
笑い話であるが、製作を先に行い詳細図を製作品に合わせて作成した例を聞いたことがあるが、とんでもない話である。
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